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2008/10/05

白と黒のナイフ

監督:リチャード・マーカンド
出演:グレン・クローズ/ジェフ・ブリッジス/ピーター・コヨーテ/ロバート・ロッジア/ジョン・デナー/ランス・ヘンリクセン/ウィリアム・アレン・ヤング/ブランドン・コール/ガイ・ボイド/リー・テイラー=ヤング/カレン・オースティン

30点満点中15点=監3/話3/出3/芸3/技3

【被告に恋をした弁護士、事件に翻弄される】
 海岸の別荘で資産家の女性が刺殺される。その夫、新聞社の編集長ジャックは現場で何者かに殴られ病院に担ぎこまれるが、検事のトーマス・クラズニーは彼こそが犯人だとにらんで捜査を進める。ジャックの弁護を担当するのは、かつて検察でトーマスと組んでいたテディ。ジャックに好意を抱いたテディは、旧知の探偵サムの助けを得ながら法廷に立つが、ジャックの嘘や意外な証人の存在が次々と発覚、次第に彼を信用できなくなるのだった。
(1985年 アメリカ)

【ジリジリヒリヒリのない、フツーのサスペンス】
 BGMが抑えられた中に突然混じる扇情的なサウンド、ゆっくりと対象物へとにじり寄るカメラ、ペンキのニオイがしそうな美術。どこかヒッチコックを思わせる作りだ。
 が、巨匠の諸作品に見られるジリジリと焦げつくような、次に何が起こるか予断を許さない空気はゼロ、味付けとなるユーモアもない。全体にまったりとしている。

 だいたい、テディがジャックに惹かれるという展開に説得力がないし、伏線らしい伏線もなく、なんだか強引に「こんな証人が来ました」「こういう証拠が出ました」と進んでいく。
 クラズニーが「公判番号26022だ」と過去の汚点を実は気にしているらしいとわかる点、テディとジャックが抱き合っているのを見つけたテディの息子ジャックの「ごめんよ」というセリフ、ジャックの家から逃げ帰ってシャワーを浴びるテディなど、なかなかリアルな部分もあるのだけれど、肝心の事件&真相&法廷戦術に緊迫感がない。
 そんなお話を、特に盛り上げる工夫もなく、緩急をつけるでもなく、TVサイズでフツーに撮ってしまった映画。

 20年以上も前の作品、という点は言い訳にならないだろう。同じく事件の行方が裏切りと駆け引きと意外な証人によって二転三転する法廷サスペンス、クリスティ作『情婦』をビリー・ワイルダーが撮ったのは1957年、それをリメイクしたTV映画『検察側の証人』(アラン・ギブソン監督/被告の役はジェフ・ブリッジスの兄ボー・ブリッジス/実は『情婦』よりこっちを先に観て、かなりショックを受けた)が1982年。
 この2作には「うわっ」という驚きが満ちていたが、それと比べるとはるかに劣る仕上がりだ。

 上記2作品や『ザ・プラクティス』がいかに法廷サスペンスとして優れているか、再確認できるにとどまる映画である。

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