明日へのチケット
監督:エルマンノ・オルミ/アッバス・キアロスタミ/ケン・ローチ
出演:カルロ・デッレ・ピアーネ/ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ/シルヴァーナ・ド・サンティス/フィリッポ・トロジャーノ/マーティン・コムストン/ガリー・メイトランド/ウィリアム・ルーアン/ブレルタ・カハニ/クライディ・チョーライ/アイシェ・ジューリチ/カロリーナ・ベンヴェンガ
30点満点中15点=監3/話2/出4/芸3/技3
【ローマ行き特急列車での出来事】
オーストリアでの仕事を終え、美人秘書に後ろ髪を引かれながらも孫が気がかりな老教授。口やかましく横柄な老婦人と、彼女の荷物を抱え彼女の言葉に従い続ける青年。チャンピオンズ・リーグの観戦へと向かう3人のにぎやかなセルティック・サポーター。はるばるアルバニアから父に会うため旅をする5人家族……。同じ列車に乗り合わせた人々が、すれ違い、あるいは関わりあいながらローマを目指す。
(2005年 イタリア/イギリス)
【列車内と変則オムニバスの限界】
不特定多数が出会い、かつ「人の行く先」などの暗示を込めやすい列車内というのは、映画の舞台として大きな可能性を秘めていると思う。国境を越える路線、個室付き列車ならなおさら、いろいろと面白いものを詰め込めるんじゃないだろうか。
たとえばミステリー仕立てにするなら、実際に『バルカン超特急』や『オリエント急行殺人事件』といった面白い作品が生み出されているわけで。
が、同時に限界も感じざるを得ない。なにしろ1両のスペースは、左右が4~5m、縦が20~28mほど。どうしても画角が限定され、絵柄に変化をつけづらい。
しかも本作の場合、監督3人制ということもあって散文的な内容、その割に個別のエピソードごと(監督ごと)の特性・差異も抑えられていて、全体としてダイナミズムに乏しいまったりとした仕上がりだ。
そんな中でも、老教授のエピソードは時制に工夫を凝らし(1~10の出来事があり、現在が10として、1~9を自在に入れ替えて回想する)てあったり、そのうえで「何事もなかったかのように現在がある」という侘しさを漂わせたりして、まずまず興味深い。
以後も、長回しで老婦人が発する不快感を増長させたり、車掌の役割(客をルールに従わせる&ルールの許す範囲で客をあしらう)を考えさせたり、人と人とがわかりあえたり現状から脱却できたりする可能性を示したり、詰め込まれたメッセージにはそれなりに感心できるものもある。
けれど、いかにも淡々としていて、どの人物にも深く潜り込まないまま。
映画としても物語としても、それほど魅力的ではない作品。
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