Rain レイン
監督:マイケル・メレディス
出演:ドン・メレディス/ピーター・フォーク/マイケル・サントロ/ジョーイ・ビロウ/マーレ・ケネディ/エリック・アヴァリ/ペネロープ・アレン/ブルース・ボーン/ブライス・ダナー/ロバート・キャラダイン/ロバート・カサリー/チャック・クーパー/ヘザー・カフカ/クリスティン・カール/ジョージ・カッチャー/ビル・ストックトン/ライル・ラヴェット
30点満点中15点=監3/話3/出4/芸3/技2
【クリーヴランド。3日の間、彼らの上に雨は降り続けた】
材料をダメにしてしまったタイル職人は、金策に悩む。ドラッグ中毒のため赤ん坊を取り上げられた若い女は、判事のもとに通う。息子を亡くしたばかりのタクシードライバーは、今夜も車を走らせる。知恵遅れの掃除夫は、タイムカードを押す。ささいなことで口論となる夫と妻。嘘とアルコールばかりの年金生活者。クリーヴランドで暮らす人たちの上に、雨が降り注ぎ、ラジオのジャズ専門チャンネルがセッションを届ける。
(2003年 アメリカ)
【深みが足りない】
主要登場人物には、物理的・環境的に“ひとりきり”という者はいない。電話をかけたり誰かを訪ねたり、家族がいたり客を車に乗せたり。が、精神的にはみんな、絶望的なまでにひとりぼっちだ。
雨は孤独な心を洗い流してはくれない。幾人かはラストで、雨が上がると同時に少しばかりの光を手にしたようだが、さて、それも明日にはどうなっていることか。
そんな“寂しさ”をテーマとした物語だが、どうも深みがない。雨というロケーション、沈んだジャズ、ピーター・フォークの凄まじい落ちぶれっぷりといった良質なパーツを得ながら、不思議と、やるせなさやしっとり感が欠けているように思われる。
理由の1つは、6つのエピソードをほぼ完全に独立・平行して描いた点にあるだろうか。別に無理やりクロスオーバーさせる必要はないが、個々のエピソードじたい「どうということのない人の、どうということのない体験」がほとんどなので、並列的提示では重厚感を出せなかったわけだ。
それと、撮影の質感と距離感。『クラッシュ』でも『マグノリア』でも、人の心の中にある明と暗をそのまますくい取るべく、陰影たっぷりの画面が作られていた。対象との距離も、迫ったり突き放したりと適確だった。が、本作は全体にノッペリと明るく、アングルやフレーミングのバリエーションもそう多くない。簡単にいえばテレビ的なのだ。
すっきりまとめられてはいるが、数多い群像劇の秀作に比べればパワー的に劣る作品。
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