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2008/11/02

幸せのちから

監督:ガブリエレ・ムッチーノ
出演:ウィル・スミス/ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス/タンディ・ニュートン/ブライアン・ホウ/ジェームズ・カレン/ダン・カステラネタ/カート・フラー/タカヨ・フィッシャー/ケヴィン・ウェスト

30点満点中17点=監4/話2/出4/芸4/技3

【貧しさの中、たった1つの希望】
 病院相手に骨密度測定器を売り歩くクリス・ガードナー。生活は苦しく、家賃は何か月も滞納、妻のリンダは不平を漏らし続ける。ついにリンダは家を出て行き、クリス自身もアパートから追い出されてしまう。全財産を失った彼が見つけた職は、証券会社の見習い。ただし半年間は無給、正式採用されるのは20人に1人という狭き門。それでもクリスは幼い息子クリストファーの手を引きながら、採用を目指して働き続けるのだった。
(2006年 アメリカ)

【結果がすべて】
 妻いわく「お金があれば何でも手に入るというのは間違いだが、幸せになれる可能性は高くなる」。まさに、そういう思想がベースにあって、お金と幸せ(と家族)について考えさせる作品。

 ただ、思ったよりノッペリとしていて、内容的には薄い話。
 些事のために大きなものを手に入れられない愚かさが描かれる。かと思えばその些事こそが大切であるとも説かれる。教会前にできた長蛇の列が、社会の現実を知らせる。もう戻ってこないキャプテン・アメリカは、1つ失えば次々と失ってしまう人生の厳しさ、そして「国家は助けてくれない」ということの暗示か。
 と、教訓は込められているし、機材の盗難やウイットに富んだビジネス会話など細かなエピソードはいくつか散らされているが、なぜクリスが“認められる”のかという点については描写不足だろう。キーとして登場するのはルービック・キューブと、顧客獲得のために走り回っている姿、問題文の裏側くらいだ。

 もちろん、あの長蛇の列から抜け出すのに必要なのは行動力と信念、その具現化である「ただ頑張る姿」であることは確かだろうが、それだけでは少しばかり説得力に欠ける
 まぁ、そもそも骨密度測定器のセールスマンにしたって見習い職にしたって、なんの保証もない仕事。それを選択することじたいが間違いであって、クリスが苦しむのは自業自得。いわばギャンブル人生であり、ならば過程や理由なんか問題ではなく、勝つか負けるか結果がすべて、ということなのかも知れない。
 トゥィックル氏は「どうあれ君は頑張った」というが、いや頑張ろうが頑張るまいが、全人生を賭けたギャンブルなんだから勝たなきゃ意味ないってことだ。

 そのあたりを説くための物語のベクトルが曖昧、パワー不足にも感じられるが、それでもそれなりの感動作に仕上がっているのは、作りの確かさゆえだろう。
 寄り添って、追いかける。そのカメラワークがクリスの内面を捉える。全体に“その場感”を重視した絵作りで、特にアパートや教会の中はアンダー気味、この暗さから「抜け出さなきゃ」と感じさせる。80年代のサンフランシスコなんて知らないわけだが、当時の街の雰囲気や生活感を再現した美術もいい仕事をしているはずだ。

 そして、演技。ウィル・スミスは、他の作品でのマッチョで銃をバンバンな姿から一転、悪戦苦闘する普通の父親を好演。もう出だしから『アイ・アム・レジェンド』とはまったく違う表情を見せて、役者としての懐の深さを感じさせる。
 ジェイデン・クリストファー君の芝居もナチュラル、さすがは実の親子、息があって安心して観ていられるアンサンブルだ。

 で、息子のジョークに笑えるようになったクリスだが、その笑顔は達成感からか、それともお金がある余裕からか。少なくとも「子どものために頑張った」のではなく、「子どもがいたから頑張れた」という関係であることは確か。
 原題には「ハピネス=幸福」が使われているが、むしろ「フォーチュン=幸運」によって左右されているのがクリスの生きかた。子どもというのは、幸運をつかみ取るために必要な天使、といったところだろうか。ま、ギャンブル人生に付き合わされる子どもからすればなんとも迷惑な話だが、こういう子どもが将来スゴイ人に育ったりするから(逆にボロボロになっちゃうことも多いと思うが)、人生ってわからない。

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