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2008/11/23

ラストキング・オブ・スコットランド

監督:ケヴィン・マクドナルド
出演:フォレスト・ウィテカー/ジェームズ・マカヴォイ/ケリー・ワシントン/ジリアン・アンダーソン/サイモン・マクバーニー/デヴィッド・オイェロウォ/ステファン・ルワンキィエジ/アビィ・ムキービ・ンカーガ/アダム・コッツ

30点満点中18点=監4/話4/出4/芸3/技3

【独裁者に愛された青年医師の運命】
 医師免許を取得し、大学を卒業したばかりのニコラス・ギャリガンは、やはり医師で模範的・封建的な父から逃れるためアフリカのウガンダへ赴く。そこでは前政権がクーデターによって倒され、軍人のイディ・アミンが新大統領として立ったばかりだった。偶然にもアミンのケガを治療したニコラスは彼に気に入られ、主治医兼アドバイザーとして招かれる。アミンの厚い信頼を獲得するニコラスだが、次第にアミンは凶暴性を露にしていく。
(2006年 イギリス)

【密度の濃いハイブリッド】
 訛りのきつい英語と“何者かが降りてきた”ような熱演でオスカーを勝ち取ったフォレスト・ウィテカーが見もの。タムナスさんとはまったく異なる等身大の青年医師を演じ切ったジェームズ・マカヴォイ、ふたりと堂々互したケリー・ワシントン、いい枯れっぷりのジリアン・アンダーソンなどキャスト全体も良質だ。

 が、それよりも作りのユニークさに魅了される映画。

 卒業の喧騒、家庭での悩み、陽気な音楽、味わわされる無力さ、そして、ニコラスとアミンの邂逅へ。冒頭から大きな感情の波が続く。
 各画面では斜陽の赤を思わせる色合いが作られ、望遠やズームによるドキュメンタリー・タッチの撮影が多用される。観客をウガンダへと誘い、ニコラスやアミンの立つ地をしっかり実在として印象づける絵だ。と同時に、やや離れたところから冷淡に物事を捉えたりもする。
 後半では一転、セオリー通りのスリリングなBGMや緊迫のカットバックを用いつつ、さながら犯罪映画のノリを作り出す。

 ニコラスに一貫して物語の中心人物という役割を与えながら、その意味合いを「巻き込まれた医師」にも「浅はかな若者」にも「歴史の証言者」にもしてみせる。観客とニコラスを、あるときには“傍観者”に仕立て、またあるときには“当事者”の立場へも突き落とす。
 そんな、魔術的とでも呼ぶべき不可思議な構成・流れ・作りで、観る者をズルズルと作品世界へと引きずり込んでいくのだ。

 加えて、人種・宗教・生まれ育ちの差に起因する価値観の違い、それを上回る性衝動というシンプルな本能が政治や個人の行方を左右してしまうという真理、ふらふらと光に集まってやがては叩き落される羽虫たち……など、いくつもの事実と皮肉とメタファーも撒き散らされる。

 どうやらこの監督、これまでのフィルモグラフィーを見る限りセミ・ドキュメンタリー的な作風を得意としているらしい。
 いくぶん詰め込みすぎ、人物について掘り下げ不足にも思えるが、面目躍如といえる仕上がりだろう。

 ただの史劇ではない。完全な創作でもない。そう、これは実録モノとサスペンスの、極めて優秀なハイブリッドである。

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