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2008/11/11

デジャヴ

監督:トニー・スコット
出演:デンゼル・ワシントン/ポーラ・パットン/ヴァル・キルマー/ジム・カヴィーゼル/アダム・ゴールドバーグ/エルデン・ヘンソン/エリカ・アレクサンダー/ブルース・グリーンウッド/マット・クレイヴン/エル・ファニング/エンリケ・カスティーヨ/マーク・フィニィ

30点満点中19点=監4/話4/出4/芸3/技4

★ネタバレを含みます★
★あらすじを知らないまま観たほうが楽しめます★

【事件が起こる前に犯人を捕らえることはできるのか?】
 フェリーが何者かに爆破され、500人以上が命を落とす。ATF(アルコール・煙草火器取締局)のダグ・カーリンは、事件の直前に殺害された女性クレアが犯人と接触していたはずだと推理、FBIと協力し“白雪姫”のタイム・ウィンドウを使った極秘捜査を進めることになる。それは4日と6時間前の世界を自在に観られるという驚異の映像装置。まだ生きていた頃のクレアの姿を見ながら、ダグは犯人の特定と逮捕を目指すのだが……。
(2006年 アメリカ)

【融合が生んだ佳作】
 こけおどし、というと言葉は悪いが「とりあえずパーっと派手に見せれば何となく面白く感じられるでしょ!」という方法論で映画を作る両巨頭と思えるのが、ジェリー・ブラッカイマーとトニー・スコット。
 ふたりが組むと意外にも、派手なだけに終わらず、不思議な相乗効果がもたらされるようだ。

 前コンビ作である『エネミー・オブ・アメリカ』は「トニー・スコットならではの“スタイリッシュな映像”がほどほどのレベルでコントロール」されて良質なエンターテインメントとして仕上がっていた。が、今度はちょっと様子が違う。
 ぎゅぅうんと大仰に、不安げに動くスコット監督の絵作りが、そのまんま「自在なアングルで過去を観られる」というタイム・ウィンドウのリアリティ(いや、科学的リアリティはこれっぽっちもないんだけれど)を作り出している。それが面白い。この監督の映像センスを逆手に取った映画になっているのだ。このあたりがブラッカイマーの手腕なのかも知れない。

 まったく予備知識ナシで観たせいもあるだろうが、ストーリーも面白い。確かに後半はやや強引になっているとは思うものの、各種のタイム・パラドックスを上手に収束させつつ一気に終幕へと走る。ラストに「えっと、それでいいのか?」という不思議な余韻を残すのも、いい。

 4日後には“映像内世界”でも爆発が起こってしまう、という設定が効いているのだろう。パッチワーク的な編集でフェリーのにぎわいを見せる冒頭部、細かく速く畳み掛けるカットでスピード感を創出したカーチェイス、問答無用の端折りかたでストーリーを進める語り口……。それらによる緊張感と「タイムリミット」とが絡み合って、さらにスリルは増す。打ち込み系のBGMで焦燥感を煽る手法も手馴れたものだ。
 そんなことしてもムダなのに、タイム・ウィンドウを横から覗き込もうとするダグの様子がお茶目。そういうスパイスも、またいい。

 画面の密度も良好。たとえば撮影範囲は、うつすべき100のうち真ん中の80パーセント部分をクローズアップしたような感じで、濃厚かつ重い絵だ。常に片側から当てる照明で舞台や人物の表情に陰影を作り、その場感・立体感と「いま観ているのは世界の一面でしかない」というテーマを前面に出してくる。

 役者も(サスペンスの割に)生き生きと動き、珍しく明るいデンゼル、美しいポーラ・パットン、いつの間にか太っちゃったヴァル・キルマー、いわれるまでわからんくらい別人のジム・カヴィーゼル、絵に描いたような学者のアダム・ゴールドバーグ、立派に成長したエルデン・ヘンソン、贅沢な使いかたのエル・ファニングと、実に豪華。

 各種の要素がキレイにつながり、時間モノとスタイリッシュ・アクションとが上手に融合されて、佳作といえる映画が出来上がった。

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