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2008/11/25

フリーダムランド

監督:ジョー・ロス
出演:サミュエル・L・ジャクソン/ジュリアン・ムーア/イーディ・ファルコ/ロン・エルダード/ウィリアム・フォーサイス/アーンジャニュー・エリス/アンソニー・マッキー/ラターニャ・リチャードソン/クラーク・ピータース/フライ・ウィリアムス3世/フィリップ・ボスコ/ドリアン・ミシック/マーロン・シャーマン

30点満点中18点=監4/話3/出4/芸3/技4

【行方不明の少年。事件の裏にあるものは?】
 ニュージャージー州デンプシー。病院に両手を血だらけにした白人女性ブレンダが現れ、カージャックに遭ったと訴える。クルマには幼い息子コーディが乗ったまま。事情聴取したロレンゾ刑事は彼女が何かを隠しているのではと訝るが、ブレンダの兄で刑事のダニーは、事件現場近くにあるアームストロング団地を閉鎖する。そこは貧しい黒人ばかりが暮らし、犯罪が多発する地。住民と警官がにらみあいを続ける中、ロレンゾは真相に迫っていく。
(2006年 アメリカ)

【被害者は誰か】
 一見するとダマシ系ミステリーのような顔をしている。実際、物語のスタートは『消えた花嫁』あたりの翻案だろうか、とも思えた。が、すぐに意外な体臭を放ちはじめる。

 なにしろ序盤30分は、重々しいBGMに乗せて移動と騒ぎをうつすだけである。事件につながる“何か”を提示するわけでもなく、ずいぶんゆっくりとした流れだ。中盤にも、とりたてて劇的な展開はない。
 が、退屈なわけではない。むしろ心地よい焦れったさが作品を覆う。

 さながら「お芝居映画」を観ているような感覚。ボロボロになったジュリアン・ムーアの演技に見入ることで、映画そのものにも入り込んでいける。
 さらに、手持ちカメラ+短く重ねられるカットで、この不安定な土地で人生を過ごすロレンゾの焦りと疲れを、どう振る舞っていいのかわからないブレンダの焦りと哀しみを、たっぷりすくい取っていく。
 青く沈み、けれど哀しいまでにクリアで、冷え冷えとした空気感が漂う画面から、登場人物たちそれぞれが抱える“やるせなさ”も滲み出す。

 そして後半。事件の概要と、それに対してロレンゾやボランティアのカレンらが「どう対処しようとしているのか」がわかると、この映画の目指す方向も理解できるようになる。
 ああこれは、社会派ドラマなのか。

 お決まりの、白人対黒人の人種差別、その発端でもあり結果でもある経済格差と犯罪、ミッシング・チルドレンの多発……。アメリカならではの社会問題と同時に、子を失った親と親を失った子の存在を印象づけ、そうして強烈に突きつけてくる“親子”という関係の真実。
 ごく簡単にいえば「子を生むということの責任の重さ」を、あるいは「子を生んではいけない大人がいる」という事実を、この映画は訴えかけてくるのである。

 怒りと哀しさと、それらを生み出す人間の愚かさとを、静かに静かに画面に刻もうとした映画。
 たぶんこの世界すべてが平和と安息で満たされる日は来ない。それでもあなたは子どもを生みますか? この世界で子どもを育てていく知恵と勇気を持っていますか?
 持っていると答えるアナタは、それが勘違いだと気づくことでしょう。あるいは、そんな知恵や勇気が必要だなんて考えもせず、アナタは親になるのでしょう。その行為が世界から平和と安息を奪うことになるのです。

 そんなミもフタもない警告を発する映画である。

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