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2008/12/28

ストレンヂア -無皇刃譚-

監督:安藤真裕
出演:長瀬智也/知念侑李/山寺宏一/大塚明夫/宮野真守/伊井篤史/竹中直人/石塚運昇/坂本真綾

30点満点中18点=監4/話3/出3/芸5/技3

【名無しの侍】
 寺から焼け出された仔太郎と犬の飛丸は、万覚寺への旅を続けていた。いっぽう赤池国の領地では、明国から来た者たちが巨大な砦の建造を急ぐ。それは不老不死の薬“仙”を作るための装置。だが薬の完成には、選ばれし子ども=仔太郎が必要となる。満月の夜までに仔太郎を確保しようと、金髪の剣士・羅狼らが往く。偶然にも仔太郎を助けた名無しの侍は、もう剣は抜かないと決めた過去を引きずりながら、この戦いに巻き込まれるのだった。
(2007年 日本 アニメ)

【意外な好仕上がり】
 最近観た日本製アニメの中では、かなり上質な作品、実写邦画を含めても、各パーツの優秀さと、それらが目指す“方向性”の感じられる仕上がりだ。

 スピーディで、また陰影も豊かな作画には安定味がある。水彩画的な背景美術は、世界の奥行き・広がり・季節感を感じさせる。要所で挟まれるCGにも大きな違和感はない。
 そうした良質な絵が、あるときは実写的なレイアウトで、またあるときはアニメにしかできないアングルで、立体的に構成される。

 見た目の良さに加えて、佐藤直紀による音楽が秀逸。耳に残る優しい管弦をベースとしながらも、剣戟シーンでは笛や太鼓にエレキギター(だと思うがシンセサイザーかも。いずれにせよ実に日本的でゾクゾク感のある組み合わせだと思う)を乗っけて盛り上げる。
 作品世界をグっと引き締める、極上のサントラだ。

 主演・長瀬くんというキャスティングも(好みのタイプという贔屓目を抜きにして)、意外と上々。「結局は剣しかないが、人の心を失いたくない」という名無しのポジションに、きれいにハマる。それを手練れのプロ声優らが囲んで、安心して聴いていられた。

 演出にもセンスと意識の高さがある。たとえば静かな場面でも火や風のわずかな動きを感じさせ、世界を“止めてしまう”愚を犯さない。
 またアクション・シーンも「とりあえず迫力さえありゃいいんでしょ」という行き当たりばったりの暴力には向かわない。相手がこう動けば、こちらはこう動く。右へ行けば、それがある。反動、躊躇、力感といった細かな部分も疎かにしない。ちゃんと理にかなった、しっかり計算された場面が作られている。

 そうして目指したのは、時代劇(というよりチャンバラ活劇か)だ。
 名無しが引きずる過去、彼と仔太郎の関係、飛丸というアクセント、羅狼や将監の価値観、ちょっぴりのオカルト風味(これが大切。『赤影』的な下世話感が漂う)などをスッキリと配して、「世を捨て切れなかった者が、苦悩を乗り越えるために通過する闘い」としてのチャンバラ活劇へと、上手にまとめてある。ベタな決着も、自分好みだ。

 何とか古風に仕上げようと頑張っているけれど言葉の新しさが混じってしまうセリフ、取ってつけたような祥庵という存在、羅狼や将監の“味”の不足、重太郎や萩姫や唐人剣士たち周辺キャラクターも突っ込み不足……と、練り込み切れなかった部分は多々あるけれど、現代的方法論で作られたアニメに“古きよきチャンバラ”のエッセンスを程よく混ぜて、意外な好仕上がりを見せた作品だと思う。

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