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2008/12/15

椿三十郎

監督:黒澤明
出演:三船敏郎/仲代達矢/加山雄三/久保明/土屋嘉男/田中邦衛/平田昭彦/入江たか子/団令子/小林桂樹/清水将夫/志村喬/藤原釜足/伊藤雄之助

30点満点中18点=監4/話4/出4/芸3/技3

【藩の一大事に、あの男が駆け回る】
 城内で贈収賄がはびこっていると知った守島たち9人の若侍は、頼りにならない城代家老・睦田を見限り、大目付の菊井に相談を持ち込む。が、実は菊井こそが不正の黒幕。菊井や次席家老の黒藤、菊井に仕える室戸半兵衛らは若侍たちを奸計で陥れ、さらには睦田に濡れ衣を着せようとする。窮地に陥った守島たちを救ったのは、通りすがりの浪人。口の悪いこの男・椿三十郎の手助けを得て、9人の若者は逆襲に転じるのだった。
(1962年 日本)

【傑物縦横無尽の娯楽作】
 スケールや完成度の点では前作にあたる『用心棒』のほうが上だろう。ただ本作には本作の、コンパクトでテンポがいいという良さがある。

 ストーリーのかなりの部分を会話による説明でまかなっているが、セリフのやり取りを上手に整理し、IQを落とさない工夫が凝らされているのはさすがだ。
 血気盛んな若侍たちの周囲に、狡猾さと情熱を併せ持つ椿三十郎、悠長な奥方、間の抜けた人質、自分がもっとも賢いと思い込んでいる室戸などクセのあるキャラクターをズラリと配したバランス感覚も見事。

 なにより、全編にちょっとトボケた味を散らして殺伐さを取り除き、まったく予想のつかない展開&アクシデントと「なるほど」という打開策を用意し、そしてかの有名なラストシーンへ至るまで、まったく飽きさせない流れが作られている。実に楽しい。

 撮りかたとしては、小さな建物や部屋の中の、限られた空間を目一杯に使ったカメラワークが見もの。門から走り出てくる馬を、椿三十郎越しにアオリ気味で撮ったカット/シーンに迫力がある。

 面白いのは、常に“椿三十郎は特別な存在”と意識させるレイアウトが採用されている点。若侍たちがグルリと三十郎を取り囲んだり、見得を切るようにして立つ三十郎の向こうに9人が並んだり、奥行きのある構図のいちばん手前に三十郎を配したり。それを天地左右ギリギリのサイズで撮って、三十郎をグワっと浮かび上がらせるのだ。
 三船敏郎の、やや猫背気味の肩甲骨のラインともあいまって、椿三十郎という傑物の凄さが十二分に画面へと焼きつけられる。

 とまぁゴタクを並べるまでもなく、ぼぉっと観ていても面白い娯楽作。キーワードとなっている「本当にいい刀は鞘に収まっている」などについて深く考えるのではなく、ただただ単純に、笑ってスカっとしたい映画だ。

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