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2008/12/16

スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ

監督:三池崇史
出演:伊藤英明/佐藤浩市/伊勢谷友介/安藤政信/堺雅人/小栗旬/田中要次/石橋貴明/木村佳乃/内田流果/香取慎吾/クエンティン・タランティーノ/石橋蓮司/塩見三省/松重豊/香川照之/桃井かおり

30点満点中17点=監4/話2/出4/芸3/技4

【血塗られた村で、平家と源氏の銃撃戦が始まる】
 根畑の村に眠るのは、平家の落人が遺した財宝。にらみあうのは、卑怯者の清盛を首領とする平家の末裔たちと、モノノフの心を尊ぶ義経が率いる源氏の一団。そこに現れたのは1人の凄腕ガンマン。彼を引き込むのはどちらの陣営か? 保安官の企みの陰でガンマンは、料理屋を営むルリ子から、村の歴史、清盛に殺されたルリ子の息子アキラ、その妻で源氏の出である静、アキラと静の息子・平八らの話を聞き、自ら進むべき道を決めるのだった。
(2007年 日本)

【カッコよさと締まりの悪さが同居する怪作】
 怪作。展開や村の作り、映しかたを『用心棒』から持ってきて、そこに源平の合戦をミクスし、全編英語の西部劇として仕上げるなんてこと、しかもこれだけのスケールでやっちゃうなんて、他の人にはできませんわ。

 相変わらず、三池監督のカットの決まりかたと編集は極上。「このタイミングで、このアングルとフレーミングで撮ったこのカットを、これだけの長さでつなければ、ほら、カッコいいでしょ」の連続だ。
 かつ、各カットに陰影と奥行きがあって、極めて立体的。何かで書いたと思うけれど、ベタっと撮らず、こうして明るい部分と暗い部分をしっかりコントロールし、背景にも気を配るだけで、風格のある絵に仕上がるのだな。
 加えて、意外とジックリ見せる場面もたくさん作ってあって、それがイザというとき急激にテンポアップ、そのメリハリもカッコよさ向上へとつながっている。

 1つ1つの動作にいちいちSEが入るウザったさもユニークだし、音楽も西部劇と時代劇のミクスで面白い。乾いたり雪が積もったりする村の造形・空気感も上質だ。

 とはいえ最大のキモは、やはりキャスティングだろう。
 伊藤英明はガンマン・スタイルと銃の扱いが思いのほかキマっているし、それに輪をかけて伊勢谷友介はカッコよく、佐藤浩市は根っからの卑怯者を好演。松重豊はあの顔に意外なほど英語セリフがハマり、香川照之もやっぱり上手い。
 堺雅人と小栗旬の見せ場はまったくといっていいほどなかったし、田中要次も石橋貴明も香取慎吾もクエンティン・タランティーノも別にいらないんだけれど、三池監督お得意の「なんでもかんでも入れちゃって、それでも成立させてしまう豪腕」を見せつけられる思い。

 で、女優ふたり。汚くてエロい木村佳乃、カッコイイばばあ・桃井かおりが素晴らしい。たぶん「観客に、このふたりを『スゴイ』と感じさせよう」というのが、本作の隠しテーマだったはず。それをまっとうする存在感で、いや実際、これってバカみたいに殺しあう男どもの中に狂い咲いた二輪の華を観るための映画かも、と思える。

 キズはストーリーというか全体的な流れ。こういうインチキ臭い西部劇には不可欠な○○○○○銃が出てきたり、もうやたらめったら人が死んだり、意外な人が意外な活躍を見せたり、そういう「はいはい、こういうこともやりましょうかね」的なサービス精神はいいんだけれど、あまりに雑然としすぎ。たぶん、映画4本分くらいのネタが詰まっている。
 その割には中間の1時間ほどが、やや緩め。そのバランスの悪さが、せっかくのスタイリッシュな仕上がりから“ピシリ感”を削いでしまっているように感じられる。

 どうせなら詰め込めるだけ詰め込んだネタを徹底的に濃く描き切って(たとえば義経に対する弁慶の絶対的な忠義心を示すエピソードとか、トシオとルリ子の関係とか)、観終わった後に「はぁ~」とため息が漏れてストーリーを思い出すことすらできないくらい疲れるギッシリ映画にすればよかったのに。
 そこまでブっ飛べば、正真正銘の怪作になっただろう。

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