アヒルと鴨のコインロッカー
監督:中村義洋
出演:濱田岳/瑛太/関めぐみ/田村圭生/関暁夫/平田薫/キムラ緑子/なぎら健壱/松田龍平/大塚寧々
30点満点中17点=監3/話4/出4/芸3/技3
【いっしょに本屋を襲わないか?】
大学進学のため単身で仙台へとやって来た椎名は、アパートの隣人・河崎と知り合う。2挺のモデルガンを取り出した河崎が椎名に持ちかけたのは、本屋を襲撃して広辞苑を奪うという計画。さらに河崎は「隣の隣に住んでいるのはブータン人だ」「ペットショップの店長は信用するな」ともいう。やがて椎名は、河崎、ブータン人のダルジ、ペットショップの麗子、河崎の元彼女でダルジの恋人・琴美らにまつわる、哀しい過去を知ることになる。
(2006年 アメリカ)
【思ったより誠実】
冒頭で椎名の“イケテなさ”加減をサラリと描いたり、車の確保から河崎を尾行するまでを流れよく(かつ過度の説明なく)見せたりして「映画的」であることに気を配った作り。フラッシュバックがモノクロであることにもインド人女性が登場することにもちゃんと意味があって、全体に語り口と脚色の上手さを感じるデキになっている。
濱田岳、瑛太、関めぐみ、松田龍平らの持ち味をそのまんま引き出している点は誠実。いやもうホントにそのまんま。濱田のオドオド感と頭のてっぺんから出る「へっ?」というセリフとか、瑛太の怪しさとか、関めぐみの視線と身体のラインとか、松田龍平のプラプラ風味とか、他の出演作と完全にオーバーラップしている。
まぁ椎名と麗子が出会うところなど都合のよさは否めないし、前半と後半で揺らいでしまう視点、小説的なセリフ(もっとも河崎=瑛太のセリフが小説的である点についてはエクスキューズがあるが)、人物描写がかなり省かれているために生まれる“浅さ”、TVサイズのスケールなど「いい映画にはなり得ないキズ」も多々あって褒めっぱなしというわけにはいかない。
が、少なくとも「原作は面白いだろう」と感じさせるし、ダマシ系ミステリーというより青春映画志向でコンパクトにまとめきった仕上がりには好感を持てる。
決していい映画ではないけれど、「映画にする意味なんてあまりないミステリー小説の映画化」としては、思ったより“観られる”作品だろう。
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