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2008/12/19

ベクシル 2077 日本鎖国

監督:曽利文彦
出演:黒木メイサ/谷原章介/松雪泰子/大塚明夫/朴路美/櫻井孝宏/森川智之/柿原徹也

30点満点中15点=監3/話1/出4/芸3/技4

【あれから10年。日本はどうなったのか】
 ロボット技術の分野で世界市場を独占した日本。危機感を募らせた各国は技術的制約協定を結ぶが、これに反対する日本は、障壁の建築や電波・光の遮断などによる“完全鎖国”を敢行する。日本の様子をうかがい知れぬまま10年が経過、日本企業・大和重鋼が米国内で不穏な動きを見せ始める。真相を探るため、ベクシルやレオンたちアメリカの特殊部隊SWORDは日本へと潜入。だが、そこで待っていたのは恐るべき光景と陰謀だった。
(2007年 日本/アニメ)

【クソのようなシナリオだが、何とか観られる】
 アクションのスピード感は良。砂中のモンスター・ジャグが『デューン』や『ミッション・トゥ・マーズ』のパクリっぽかったり、ファイタースーツに既視感があったりもするが、それらを存分に“動かす”ことには成功している。
 明るさ・暗さの表現も美しく、重み、衝撃、空気感の漂う絵にもなっていて、生身・実物ではできないことを十分に表現したといえるだろう。
 それらを捉えるカメラワークもダイナミック。1カットが微妙に長く思える箇所も多いが、全体的な迫力とテンポは維持している。

 いっぽう、絵的にシラケてしまう部分も。金属や背景のテクスチュアにはこだわっているくせに、肌と洋服は単調な彩色で人物が浮いてしまっているのが気障り。
 チューリップハットを被ったベクシルの可愛らしさや、松雪泰子のオトコマエを堪能できるマリアにはそそられるものがあるのだが、人物のプローポーションとゆっくりした動作は、まるで操り人形のよう。白人なんだか韓国人なんだか、年齢すらわからんキャラクターデザインにも「CGアニメの不得手なところ」をうかがえる。

 つまり、3DCGアニメーションとしては、可能性と限界とを同時に感じられる仕上がりだ。
 ま、このあたりは「いい部分も、これから向上させていかなきゃならない部分もある」ということで納得しよう。

 で、シナリオはヘナチョコ。
 なんで米国軍人が作戦遂行にあたって日本語を話すのか(唇の動きが明らかに日本語。この部分は演出における瑕疵ともいえるが)。拡散電波の中からどうやって外部へ電波を発信するのか。厳重警戒の中で、なぜあんなにも簡単に日本へと潜入できるのか。いざ衛星画像が映った際の大佐のリアクションも素直すぎないか(まずデコードの失敗を疑うべきだろう)。大和本社とブリッジが接続されていないのは計算済みだったのではないのか。
 民族の頂点とか滅亡とかって、生殖機能や海外在留邦人のことを完全に無視していないか? なんで戦後の闇市が21世紀に生きる日本人のアイデンティティになるのかも疑問。

 もうツッコミどころ満載。出来事・展開的・精神的なリアリティは皆無に等しい。セリフも、ボキャブラリーや言い回しが高校生レベルだし。
 ベクシルが口の中に仕込んだナイフ、ミニ・ジャグをなでるキサラギといった伏線で一応のまとまりはつけたものの、もうちょっと何とかならなかったのだろうか。
 前述の通り、見た目の仕上がりはまずまずなだけに、ストーリー/シナリオ面のバカを丁寧に潰し、ディテールを見直し、ベクシルがタカシらと会ってからの部分を厚くするなどバランスも整えれば、いいSFアクションになったと思うのだが。

 まぁ『APPLESEED』を観たうえでストーリー/シナリオに期待するほうが間違っているのだろう。でも、単にライターや監督が悪いだけではなく、製作サイドの上のほうに「ホントにこれでいいの?」と異議を唱えるだけのマトモな精神の持ち主がいなかった、ということは問題に思える。

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