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2008/12/13

憑神

監督:降旗康男
出演:妻夫木聡/夏木マリ/佐々木蔵之介/鈴木砂羽/佐藤隆太/笛木優子/香川照之/徳井優/石橋蓮司/本田大輔/上田耕一/西田敏行/赤井英和/森迫永依/江口洋介

30点満点中16点=監3/話3/出4/芸4/技2

【災いの神は、みたび巡り来る!?】
 将軍の影武者を代々務める別所家の次男・彦四郎は、井上家に婿養子として入るものの当主・軍兵衛の奸計により追い出されてしまい、出世の道を閉ざされる。やけ酒をあおった彦四郎は、旧友・榎本武揚を幕府の要職に就かせたという『三囲稲荷』に手を合わせたはずだったが、なんとそれは『三巡稲荷』。三度巡ってくるのは、彦四郎を不幸に落とす貧乏神、疫病神、そして死神だ。自身と大切な人とを守ろうと、彦四郎は幕末の江戸を奔走する。
(2007年 日本)

【完成度は低いけれど、見るべき点もいろいろ】
 もうちょっとで“愚”といいたくなるような脚本。もう何でもかんでもセリフで説明してしまうんだもん。
 幸い原作にあるであろうユニークな掛け合いがそのまま生かされているらしく、しばしばクスリとさせられるけれど、逆にいえば小説的な面白みから脱し切れていないということ。
 ただ、時代劇の仮面を被っていて、その実はドタバタ・コメディで、と思わせておいて“社会の中で生きること”というテーマを匂わせて、最後にはクルリと“幕末の世の、ある価値観の苦闘”で着地するという大アクロバットを敢行してみせたことには驚かされる。
 映画として見た場合は失格、頭の悪い脚色だが、ストーリー自体はなかなかのクセモノといえるだろう。

 作りとしても、妙ちくりんなところといい部分とがゴチャ混ぜ。
 まず、CGはイマドキとしてはちゃっちいし、映像と音声が合っていないところもあり、意図しないカメラのブレも見られたりして、技術的なクォリティは高くない。
 演出的には、彦四郎(妻夫木聡)と貧乏神(西田敏行)と小文吾(佐藤隆太)が絡むパートなんて、もう勢いだけで突っ走っちゃってる感じ。なぁんか70年代の青春ドラマで見たような絵作りもチラホラ。全体的に古臭くて乱暴だ。

 が、逆にいえばその勢いと乱暴さが魅力でもある。有無をいわさぬテンポの良さでぐぅわぁ~っと引っ張っていくのだ。ラテンのノリのBGMも、不思議とこの勢いにマッチする。
 それと、特に序盤で見られた“空間表現”もなかなかのもの。美術・松宮敏之の手腕もあろうが、江戸の町、徒(かち)の屋敷にずずぅんと潜り込んでいく大胆なカメラワークは見ごたえたっぷりだ。

 そして、出演陣。生真面目な妻夫木聡、いい加減な佐々木蔵之介、調子のいい香川照之、好き勝手し放題の西田敏行、可愛い森迫永依と、素晴らしいハマリよう。笛木優子の日本髪っていうのも、相当にイケている。
 まぁ佐藤隆太と江口洋介は何やってもいっしょだけれど、それがかえって安心感を生んだりもして。全体にハズレのないキャスティングだろう。

 そんなわけで、映画としての完成度は低いものの、見るべき点もいろいろとあって、デキの割には意外と楽しめる映画。

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