クローズZERO
監督:三池崇史
出演:小栗旬/やべきょうすけ/黒木メイサ/桐谷健太/高橋努/鈴之助/遠藤要/上地雄輔/伊崎右典/伊崎央登/波岡一喜/武田航平/山口仁/渡辺大/深水元基/松重豊/塩見三省/遠藤憲一/岸谷五朗/高岡蒼甫/山田孝之
30点満点中16点=監4/話2/出4/芸2/技4
【この学校で、テッペンを目指す!】
不良どもが集まる鈴蘭高校。いまだ頂点(テッペン)を極めた者が誰もいないこの学校に、流星会組長の息子・滝谷源治が転校してくる。現在もっともテッペンに近いといわれる芹沢多摩雄が率いる一派との抗争へ向けて、礎を築いていく源治。謎の少女ルカ、流星会と敵対する矢崎組、その舎弟頭である拳、暴走族「武装戦線」、源治と芹沢の共通の友人・時生が抱える難病など、さまざまな人物の思惑や行動も絡んで、派閥争いが激化していく。
(2007年 日本)
【ファンタジック社会派アイドル映画】
原作はコミック、イケメンがズラリと登場、熱い血がたぎる青春ドラマ。要するにこれってアイドル映画なんだな。「ぼよよ~ん」な効果音をはじめとしたベタな笑いはあるし、無駄に歌やダンスも挿入されるし。
だから、細かなところはウニャウニャでいいのだ。役者がカッコよければそれでいいのだ。
ある種、ファンタジーでもある。「テッペンを獲る」という絶対的な大目標・大前提があり、そこへ向けての群雄割拠と権謀術数と活劇は、舞台を中世に置き換えて腕っぷしの代わりに剣と魔法を持ってくれば、そのまんまファンタジーだろう。
ガキ的価値観に基づいた自己実現を描く、社会派の側面も持つ。
テッペンを獲ったってどうにもならないとわかりつつ、それしかないという判断基準のもとに殴る蹴る。ただしガキだから、死の臭いはない。派閥争いというゲームにリアルな血なまぐささはない。
代わりに死と現実を感じさせるのは、周囲の大人たち、かつては悪かったがいまでは真面目にサラリーマンをやっている鈴蘭の卒業生、ガキには手出しのできない病気……。「そんなものに負けてたまるか」という気概で、他に自己実現の方法を知らないガキたちは殴る蹴る。
とはいえガキたちはあくまで、彼らがガキだと知る大人たち=「ガキがガキでいられる時間」にノスタルジーを覚える人々の庇護の下にあることも事実。ガキと大人の中間で自分を持て余す拳さんの右往左往が愛らしい(「俺たちがビシぃっとやっときますんで、拳さんはシュシュぅ~っと行ってきてください」ってところがツボ)。
という視点で捉えると、まぁ見た目的には及第点。源治の肩のラインとか確かにカッコイイし、黒木メイサは別嬪さんだし、やべきょうすけは極上のキャスティングだし。
格闘のバリエーションと“痛み・重み”はもう少し欲しかったと思うが、全体的にキレとスピード感はあり、閉じた世界でのドタバタを必要以上に狭く感じさせず描いている。ギラギラした高校生たちの周囲に、ドス黒い世界も色鮮やかな世界も広がっている、という絵作りも上質。
ファンタジック社会派アイドル映画という奇妙奇天烈な世界を、三池監督らしいサービス精神とセンスとカッチリ感で成立させてしまった力作、といえるかも知れない。
ただ、源治が本来持つはずの(マッキーや伊崎を惹きつけた)人間的魅力と仲間を作るにあたっての苦悩、芹沢の内面、芹沢と時生との関係、戸梶や1年坊の思惑、ルカの生きざま……などは描写不足。連載マンガなら時間をかけて個々のキャラクターを掘り下げていけるのだろうが、2時間の映画では不十分、もう少し登場人物を整理してもよかっただろう。
そのぶん拳さんの「ガキとしても大人としても中途半端」という存在感が際立ったわけだが、本来ならテレビシリーズ10話くらいでテッペンへの一歩一歩を描いていくべき題材。
まぁそうやって作られても観ないと思うけど。暑苦しいから。
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