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2008/12/29

スマイル 聖夜の奇跡

監督:陣内孝則
出演:森山未來/加藤ローサ/綿貫智基/岡本杏理/鈴木智聡/鈴木拓也/吉岡大輝/清水省吾/浅間太智/和田真之介/江口悠里/チョーミン樹南/錦織草吾/モロ師岡/RIKIYA/高樹沙耶/田中好子/佐藤二朗/松重豊/森公美子/テル/原田夏希/塚本高史/玉木宏/飯島直子/原沙知絵/佐藤浩市/寺島進/谷啓/坂口憲二

30点満点中17点=監3/話4/出4/芸3/技3

【弱小チームの快進撃】
 足に怪我を負い、タップダンサーの夢を諦めた佐野修平。小学校の教諭となり、恋人・山口静華と結婚するために北海道へと渡るが、静華の父から突きつけられた条件は、惨敗続きの少年アイスホッケー・チーム「スマイラーズ」を勝利に導くこと。まったくのホッケー素人である修平だったが、メンバーに自信を植えつけ、また少年たちも難病と戦う篠原礼奈との“誓い”を胸に、次第に力をつけていく。そして、強敵との運命の試合が始まる。
(2007年 日本)

【素人、恐るべし】
 陣内監督の前作『ロッカーズ ROCKERS』の感想は「和製野暮コメディの域を脱していないし、スケールもテレビドラマの枠内。ただ、工夫とディレクションを凝らして流れを作るという“意思”が感じられる」というものだった。
 本作も、ほとんどそのまんま。

 連発されるおフザケ。ムダに豪華な友情出演。ベッタリとした画面。カット数は少なく、ダイナミックな撮りかたもあまり見られない。イメージとしては、達者な森山未來と加藤ローサがなんとか力で引っ張っていくBS深夜のドラマ、という感じだ。
 でも、確かに“意思”がある

 たとえば試合シーン。もっと各選手に近寄って欲しいとも思うが、素人が見ても少年アイスホッケーの激しさと楽しさがわかるように気を遣い、素人監督・修平の考えや熱意が選手たちに浸透していく様子をしっかりと追う。
 まぁ修平が立てる作戦にしてもゴルフ練習場や剣道場からヒントを得る場面にしてもコロコロ・コミック的なんだけれど、それってスポ根成長ドラマに不可欠な要素でもあり、バカバカしくも説得力があるじゃないか。必要なところではグワっと「ここ、盛り上げていきますよ」というヴィジュアル・エフェクトを見せてくれたりするし。
 そして決勝戦。この『The Little Drummer Boy』の演奏シーンのためにさまざまなパーツが散らされていたことがわかるクライマックス。

 つまり、おフザケはあるけれどムダはないということ。実話がもとになっているそうだが、単に「こういうことがありました。スゴイでしょ」的なベタ感動ストーリーにとどめるのではなく、「こうしたい」「こういう要素を入れたい」というアイディアを大切にしつつ、全体に流れ・組み立てを重視して仕上げるという“意思”のある作りとなっているのだ。

 もうひとつ、“愛”も感じた。
 陣内監督の愛息が実際にアイスホッケーをやっているとのこと。そのせいだろう、陣内監督自身がホッケーに接した際に捉えた驚き……ユニフォームを脱いだ途端に立ち上がる蒸気、デカい5年生、削れる氷……といったものを素直に詰め込んである(ついでに「マリモって川とか湖から採れるんじゃないの!?」という驚きも)。

 子どもたちの扱いにも“愛”あり。なんでもジュニア・アイスホッケー・チームの選手に演技をつけたとかで、おかげで試合シーンに無理はなく、素人の割には実にナチュラルな芝居をするし、綿貫智基くんは男前だし岡本杏理ちゃんは美人さんだし鈴木拓也くんは可愛いし。みんながイモムシのように連なって礼奈に見とれるところなんか、実にラブリー。

 映画としての「格」という点ではサッパリだけれど、好きな題材を好きなように撮って、これくらい面白いものに仕上げてくるってのは、陣内孝則って不思議な才能と熱意の持ち主で、幸せな人だなぁと思う。
 考えてみれば、映画監督としては素人。スマイラーズの監督もアイスホッケーの素人。子役たちも素人。素人、恐るべし、である。

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