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2008/12/05

バッテリー

監督:滝田洋二郎
出演:林遣都/山田健太/鎗田晟裕/蓮佛美沙子/米谷真一/太賀/萩原聖人/天海祐希/岸谷五朗/菅原文太

30点満点中15点=監3/話2/出4/芸3/技3

【天才投手、彼に魅せられた捕手、身体の弱い弟】
 病弱な次男・青波の療養のため、母の故郷で自然も多い新田市へと越してきた原田家。天才投手として知られる長男の巧は中学へと進学、野球部では同年の捕手・永倉豪とバッテリーを組むことになる。だが顧問の戸村に立てつくなどして先輩・展西の反感を買った巧への風当たりは強い。やがて“問題”は起こり、野球部は活動を停止させられてしまう。誰にも理解されない孤独の中でも意志を貫く巧は、球を握り続ける。
(2006年 日本)

【これは『バッテリー』ではない】
 最低限、映画として成立はしていると思う。同監督の作品『壬生義士伝』では「この映画には『伝えたいこと』がない」という印象を受けたが、今回はちゃんと、健やかなご家族向けへとベクトルを保って、それなりの感想を導くような物語になっているとも思う。

 でも、これは『バッテリー』ではない。

 まぁもともと小説として完成しているものを映画化する意味なんてないわけだけれど(そもそも、あさのあつこという天才の仕事、原田巧という天才の生きかたを凡人がどうこうできるわけないんだし)、それには目をつぶるとしても、本来『バッテリー』って、成長物語である前に野球小説であるはずなのだ。
 たとえばワールド・シリーズ、日本シリーズ、WBC、五輪、甲子園の決勝などのように、勝者と敗者をキッパリと、残酷に、天国と地獄に分ける戦いでグラウンドに漂う“野球そのものが持つ凄み”を文章で構成・表現しようとした野心作なのだ。
 その“凄み”へと、技術・メンタルという切り口で踏み込んだのが『おおきく振りかぶって』で、心(と身体のバランス)という観点から切り込んでいったのが『バッテリー』である、というのが個人的な解釈である。

 それを、フツーに、毒を抜いたカタチで「悩みながら成長しましょう」というありきたりのお話にしてしまったのが、この映画。
 読んでいてキリキリと胃が痛む、スポーツ(特に集団スポーツ)を好きになるということはこんなにも苦しいものなのかとまぶたが熱くなる。そういう鋭さがない。痛みと苦しさと鋭さを“絶対的な自信”という武器で真っ向から跳ね返そうとする巧や門脇、もがき続ける瑞垣や豪、ギラギラとした執念で痛みを否定しようとする展西、それぞれが放つ熱がない。

 さらには画角のバリエーションとか映像的な美しさは絶望的なまでに乏しい。ただ、凡人ができる範囲ではちゃんとまとめてあるし、自然描写や個々のキャラクターを大切にしていることは伝わってくるし、鎗田晟裕くんは可愛いし、で、トータル15点という評価。

 それに、詰め込まれた「伝えたいこと」が、原作と比べて完全に間違っているわけではない。「悩みながら成長しましょう」というのも野球に関わる人々についてまわる真理ではあるだろう。原作があまりに大きすぎて、せいぜいその一面しか詰め込むことができなかった、というだけの話だ。
 少なくとも、原作に内在するメッセージや良さを180度捻じ曲げてしまったテレビアニメ版『地球へ…』より、はるかに罪は小さい。

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