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2008/12/12

神童

監督:萩生田宏治
出演:成海璃子/松山ケンイチ/手塚理美/甲本雅裕/キムラ緑子/柄本明/貫地谷しほり/串田和美/浅野和之/岡田慶太/吉田日出子/西島秀俊

30点満点中12点=監2/話2/出4/芸2/技2

【ピアノを弾く少年と少女】
 音大のピアノ科受験を控える菊名和音(ワオ)は、プレッシャーを感じながらも、実家である八百屋の二階で一心にピアノを弾き続ける。いっぽう自殺したピアニストを父に持つ少女・成瀬うたは、父の影を追い、ピアノを愛しながらも、弾き続けることに苦痛を感じていた。偶然出会ったふたりは、優しさを分け合いながら、たがいにかけがえのない存在へとなっていくのだが、うたの体には、少しずつ変調が現れ始めていた。
(2006年 日本)

【デキの悪さ】
 成海璃子ってやっぱ可愛いなぁ、俺にくれ、というところ以外に見どころを探せないデキ。

 さそうあきらの原作で光っていた、うたの天才性・奔放さ・曖昧さは、かなり薄められている。どこへ向かうのかと不安にさせられるある種の狂気をはらみ、それゆえに予定調和へと収まらず、われわれ凡人には理解しがたい経過をたどった“うたの物語”が、地味ぃ~で、ふつーの女の子がふつーに悩むお話へと堕してしまっているのだ。

 その方向性が間違い。本作のテーマを台無しにし、ドラマ的にも盛り上がりを欠く要因となっている。
 ふつーの割に、いきなり大御所から認められちゃったりするという頭の悪さもある。天才性と狂気とをクッキリ描き出すべきだろうが。
 それに『神童』って、うたとワオが、おたがいの中に見つけ、相手の中から引っ張り出したもの、そういう交感もまたテーマであり、そうやってピアニストは育ち、人間は大きくなっていく、というお話だろう。つまり、このふたりのキャラクターが“がつっ”としていてはじめて成立する物語であるはずなのだが。なぁんか「のべぇ~」っとしている。

 そういう「のべぇ~」っとしたお話を、「のべぇ~」っと撮っているのだから始末が悪い。
 カメラを据えてよーいスタートで撮ったことがわかる絵、誰でも彼でも同じサイズに収めてしまい、少ないカット、間の悪い編集。貧弱なBGMと音声レベルも音楽映画としては致命的だし、ひと手間不足と予算の不足をにおわせるプロダクション・デザインも……。
 いちばんのキズは「はい、ここポイント」という部分を工夫なく撮っているところ。だから「のべぇ~」。

 まぁ、凡人に天才を描けといっても無理ってことだ。

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