ハットしてキャット
監督:ボー・ウェルチ
出演:マイク・マイヤーズ/アレック・ボールドウィン/ケリー・プレストン/ダコタ・ファニング/スペンサー・ブレスリン/エイミー・ヒル/ショーン・ヘイズ/ダニエル・チャクラン/テイラー・ライス/ブリタニー・オークス/タリア・リン・プレイリー/ダン・カステラネタ/ヴィクター・プラント/パリス・ヒルトン
30点満点中17点=監3/話2/出3/芸5/技4
【ヘンなネコが巻き起こす大騒動】
小さな街アンヴィル。ハンバーフルーブさんの不動産会社で一番のセールスを誇るママと一緒に暮らすのは、イタズラっ子のコンラッドと几帳面なサリーの兄妹だ。ベビーシッターのミセス・クワンと留守番をするふたりの前におかしな帽子をかぶったネコが登場、家の中を引っ掻き回す。今日は大切なパーティだっていうのに! おまけに隣家のクイン氏はママに言い寄ってくる。兄、妹、そしてネコの、奮闘とドタバタが始まる。
(2003年 アメリカ)
【見た目に内容が追いつかないけれど、それでも楽しい】
たまたまスカパー!でチラっと観て、あまりにブっ飛んだ色彩感覚に思わずTVのスイッチを切り、慌ててDVDで鑑賞。
いや、スゴ過ぎます。
もっとも近いのはティム・バートンの『ビッグ・フィッシュ』や『チャーリーとチョコレート工場』だと思うけれど、その倍くらいの衝撃度。赤と青と緑と黄色と紫と。小麦粘土のような毒々しい色で作られた世界には眩暈すら覚える。
色だけじゃない。玄関を入ると左にリビング、右にキッチン、正面には回り階段という室内造形は、日本人(うちだけかも知れんが)の憧れ、欧米の中流階級の家。TV版『奥さまは魔女』の、あのトキメキ。同じ形の家がチマチマと建ち並ぶアンヴィルの街も実に可愛い。
ああ、ここで暮らしたい。精神がおかしくなるだろうけど。
さすがは美術監督出身のボー・ウェルチ、面目躍如の世界観だ。本作のプロダクション・デザインはアレックス・マクダウェルで、まさに『チャーリーとチョコレート工場』だとか『コープスブライド』、『ファイト・クラブ』といったキ印映画、さらには『ターミナル』を手がけた人。なんかもうふたりで好き勝手やったんじゃないかというサイケデリック・ワールドが、この上なく楽しい。
そんなブっ飛び世界の中で、序盤、軽快なテンポでお話は展開する。イラスト仕立てで作られたドリームワークスのロゴだとか、デヴィッド・ニューマンによる「いかにもコメディです」というメイン・テーマだとか、オープニングがまずは極上。ミセス・クワンの登場のさせかたなんか、これ以外にないタイミングだもの。
そうそう、撮影は『トゥモロー・ワールド』、『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』、『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』のエマニュエル・ルベツキ。広角でグワっと登場人物のバスト・ショットと背景の極彩色とをボンっと捉える絵柄がね、もう素敵なんですわ。
ただ、じゃあ映画として極上かといえば、そうでもない。
支離滅裂なファンタジー絵本っぽいストーリーは、まぁよしとしよう。決して高得点はつけられないし、日本のお子ちゃまが観て楽しめるとも思えないけれど(劇場未公開も納得)、子どもの残酷性とか理不尽性をそのまんま表現している点がなかなかに面白い。
が、ここにマイク・マイヤーズの“ハシャギ”が乗っかってくると、うすら寒さが漂い出す。
たとえばジム・キャリー、アダム・サンドラー、ジョニー・デップあたりがどれだけハシャいでいても嫌悪感なんて抱かないんだけれど、どうしてだかマイク・マイヤーズだけは「おまい、もうちょっと真面目にフザケろよ」と感じてしまう。
なんていうか、ふつうの芝居が1、オーバーなコメディ演技が3、ジム・キャリーが5だとしたら、マイク・マイヤーズは4の後でさらに余計な3を足してイライラさせる、という感覚。
まぁ個人的な趣味嗜好の問題なんだけれど、ここでも飛びっきりチャーミングなダコちゃん、かつて『キッド』で泣かせてくれたスペンサー・ブレスリン君のナチュラルさ、なれない純コメディで精一杯アタフタするアレック・ボールドウィン、モノ1号&2号の弾けっぷり、さらにはテンポ重視の演出……といった本作のキュートな部分を、主演ひとりで台無しにしてしまっているように感じた。
ネコさんが登場してからただのドタバタに堕してしまったのも、マイク・マイヤーズの妙ちきりんなグチャグチャ芝居のおかげだろう。この味の悪さがどうにかされていればカルトになっただろうに。
ま、それでも十分に楽しめる映画だとは思う。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント