ラッキー・ユー
監督:カーティス・ハンソン
出演:エリック・バナ/ドリュー・バリモア/ロバート・デュヴァル/デブラ・メッシング/ホレイショ・サンズ/チャールズ・マーティン・スミス/ケルヴィン・ハン・イー/サヴェリオ・ゲーラ/ダニー・ホック/ロバート・ダウニー・Jr
30点満点中17点=監4/話4/出3/芸3/技3
【ポーカー・フェイスとボディ・ランゲージ】
ラスベガス。自分と母を捨てた父LCに反感を抱きながらも、父と同じくポーカー・プレイヤーとして生きるハック・チーバー。歌手を志してベガスにやって来たばかりのビリーと深い関係になるものの、彼女の金を勝手に持ち出してまでポーカーに打ち込む。やがてポーカー世界大会の日が近づき、なんとか参加費を工面しようとするハックだったが、ビリーとの仲、3度目の優勝を狙う父LCとの関係など、彼の前には問題が待っていた。
(2007年 アメリカ/オーストラリア)
【淡々とした中にも真理あり】
監督は『8Mile』や『イン・ハー・シューズ』のカーティス・ハンソンで脚本は『アポロ13』などのエリック・ロス。この組み合わせならハズレにはならないだろうと思っていたのだが、主演が『トロイ』のエリック・バナだったので観るのをためらっていた作品。
そのエリック・バナ、まずまずのデキ。華のなさ、ぼおーっとして何を考えているのかわからん顔が、若さゆえに揺れるポーカー・プレーヤーの役に意外とハマっている。ドリュー・バリモアは依然としてキュートだし、ロバート・デュヴァルも貫禄の視線。
そうした役者たちの表情による演技を大切にした撮りかたで、かつラスベガスらしいロケーションも生かし、奥行き感のある絵作りも徹底してあって、手堅くて“格”のある映画にはなっている。序盤30分ですべての状況説明を無理なくすませてしまう語り口の上手さがあるし、ポーカーのルールをわかりやすく見せてもくれる。
が、もう少し冒険もして欲しかったところ。カードやチップや体の一部にぐぅわっと寄ったり、逆に大きく俯瞰で見せたり、プレーヤーたちにもっと個性を持たせたり、相手の役や心理状態を“読む”ことの難しさと説得力とを表現したりなど、ポーカーおよびポーカー大会の醍醐味をキリキリと伝えるような雰囲気作りが、ちょっと不足している。
ゲームを淡々と進めるだけでなく、ポーカー大会という舞台を生かした面白さの創出があればさらなる良作になっただろう。
まぁ実在のポーカー・プレイヤーが本人役で多数登場しているから、この淡々とした感じが実際のポーカーなんだろう。
そしてホンモノのギャンブラーは意外と熱くならず、テーブルの上に配られるカード以外にも大切なものを持っている、ということなのだ。
許せない父と同じ道を歩むハックのコンプレックスや罪悪感をベースに置きつつ、家族や恋人などと過ごす時間(=人生)の中で培う人としての成熟こそが、その罪悪感を振り払い、プレーヤーとしても成長するための糧となる、ということが伝わってくる。
たぶんハックより「無条件のやりとりは勝ち負けより複雑」と言ってのけるビリーのほうが、人生というギャンブルにおいては優れたプレーヤーなのだろう。
積み上げられるチップは“easy come,easy go”。けれど人生は、そうはいかない。
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