オーシャンズ13
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:ジョージ・クルーニー/ブラッド・ピット/マット・デイモン/ドン・チードル/バーニー・マック/ケイシー・アフレック/スコット・カーン/エディ・ジェイミソン/シャオボー・クィン/カール・ライナー/エリオット・グールド/アンディ・ガルシア/ヴァンサン・カッセル/エディ・イザード/ジュリアン・サンズ/ボブ・エインスタイン/デヴィッド・ペイマー/オプラ・ウィンフリー/オルガ・ソスノフスカ/エレン・バーキン/アル・パチーノ
30点満点中17点=監3/話3/出4/芸4/技3
【倒れた仲間のために集結、こんどの相手はホテル王】
ラスベガスに新規オープンを目論むホテル王バンクに騙されて、ルーベンが倒れる。巻き上げられた土地や財産を取り戻そうと集結する、ダニー、ラスティ、ライナスら仲間たち。ホテルの厳重な警備を打ち破るべくさまざまな手を打つダニーたちだったが、アクシデントも相次ぎ、遂には資金が枯渇してしまう。仕方なく仇敵であるカジノ王ベネディクトに協力を仰ぎ、ようやく仕掛ける“その日”がやって来るのだったが……。
(2007年 アメリカ)
【真っ当な“チーム戦”映画に変貌】
どうしちゃったんだよソダーバーグ、という印象。ネガティヴな意味じゃなく、『11』や『12』のシリーズ過去作とはちょっと毛色の異なる仕上がりだ。
いや、このシリーズ“らしさ”はしっかりと残っている。
ひとつは、70年代風の猥雑さ・ジメっとしたスタイリッシュさが前面に出ていること。粗っぽいパンとズームで醸し出される、計算された安物感。ジャズとラウンジとテクノとを織り交ぜたデヴィッド・ホームズの音楽は、このシリーズならではの「ワルがナイスガイとして闊歩する世界の空気」を作り出す。
あえてセリフを「スムーズなやりとり」に整理せず、ちょっとオフビートなリズム感を残してあるのも、このシリーズ特有のものだ。
いっぽう、これまでと印象を異にするのは、身勝手さと自己満足が薄まっている点。
いくつかジャンプカットで“間”を外す部分もあるが、「ダニーたちがやんなきゃいけないこと」という焦点がしっかり絞れていて、それを順序立てて、わかりやすく、テンポよく、時おりアクシデントやニヤリやクスリを挟みながら、観る者の興味を惹きつけたままスムーズに進んでいく。
前作『オーシャンズ12』の感想では「既存の映画文法とは異なる手法でまとめておいて『え、これじゃダメなの?』とソラっとぼけているようなイメージ」と述べたが、それがない。
人物配置のバランス感覚も良化したように感じる。
前作ではジュリア・ロバーツ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ヴァンサン・カッセルの場面にかなりの分量を割き、そのせいで「ダニーとラスティは何もしてないじゃん」「別に11人いなくたっていいじゃん」というおバカな仕上がりとなっていた。
確かに今回も、ジョージ・クルーニーとブラッド・ピットはちょっと離れたところに立っていて、適度にストーリー展開の舵を切りつつ、メンバーやゲストキャラを光らせる、という作り。が、ダニーとラスティはそれなりにリーダーシップを発揮するようになったし、ライナスは相変わらず危なっかしいし、バシャー役のドン・チードルは芸達者なところを見せるし、マロイ兄弟は笑わせてくれるし、と、それぞれに見せ場があり、まとまりがいい。
アル・パチーノは「俺様、ゲストですから」と肩の力を抜き、ヴァンサン・カッセル(もはやレギュラーか)とジュリアン・サンズはチョイ役だけれど、その代わりデヴィッド・ペイマー、オルガ・ソスノフスカ、そしてエレン・バーキンが美味しく活躍し、オプラ・ウィンフリーは意外な使われかたでオチをスッキリ引き締めるし、つまりゲストのバランスもまずまず。
シナリオは『ニューオーリンズ・トライアル』で「原作以上にスマートでわかりやすい」ストーリーを作り上げたブライアン・コッペルマンとデヴィッド・レヴィーン。この起用が、本作のバランスやスッキリ感に効いているのだろう。
結果、「万人が満足できるエンターテインメントではない」ものだった前作に対し、誰が観てもそれなりに楽しめるものに仕上がった(サムスンの携帯電話の働きのみ、もうちょっとわかりやすく示してあげてもよかったと思うが)。
そのぶん、毒というかヒネリというか、観終わった後に残る「これって面白いのかな?」という不思議な感覚が消えて妙に残念ではあるけれど、この調子で毛色を少しずつ変えながら『20』くらいまで行ってもらえるなら、それはそれで楽しいシリーズになるかも、などと思ったりする。
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