« ニュー・ワールド | トップページ | ラッキー・ユー »

2009/02/02

トゥー・フォー・ザ・マネー

監督:D・J・カルーソー
出演:アル・パチーノ/マシュー・マコノヒー/レネ・ルッソ/アーマンド・アサンテ/ジェレミー・ピヴェン/ジェイミー・キング/ケヴィン・チャップマン/ラルフ・ガーマン/カーリー・ポープ/チャールズ・キャロル/クリスリン・オースティン

30点満点中16点=監3/話3/出4/芸3/技3

【スポーツ予想の光と闇】
 大学で名QBとして活躍したものの、最後の試合で脚を負傷、プロへの道を閉ざされたブランドン・ラング。それでも夢とフットボールへの愛情は冷めず、ギャンブラーのための予想売り込み会社で才能を発揮し始める。その予想能力に目をつけたNYのスポーツ予想業者社長ウォルター・エイブラムスは彼を引き抜き、自社のエース、100万ドルの男ジョン・アンソニーとして売り出し、多くの顧客と情報提供料を得ることに成功するのだが……。
(2005年 アメリカ)

★ネタバレを含みます★

【人生なんてギャンブルなのだ】
 ギャンブラーは負けたがっている、というのは、競馬ファンなら誰でも知っている心理であり、真理である。
 まぁ生活に困らない程度にスるくらいなら問題はないが、ノメり込めばノメり込むほど多くのものが犠牲になる。ましてや他人の人生まで背負い込む立場でギャンブルに臨むとなると、そのプレッシャーたるや。

 賭け金の大小に関わらず博打打ちに求められるのは、絶対的な自信や、その自信を他人に売り込む才能ではなく、ある種の“鈍感力”であることは間違いないだろう。
 けれど実はギャンブラーというのは繊細で、細かく細かくモノゴトを考え込んでしまったり、どうしても手放せないものを守ろうとして、勢い破滅へと突っ走っちゃうものなのである。

 ということを、題材やキャスト、ややアンター気味の画面から想像した以上に、軽ぅく、わかりやすぅく描く作品。裏読みを要求せず、事実と出来事を畳み掛ける作りで、AがあるからBが起こり、事態Cがやってくる、という作劇ではなく、いきなりBから始めるような乱暴さもある。
 ブランドンの予想能力の凄さの理由、ウォルターのカリスマ性とこれまでの成功の経緯などについてはいっさい描かず、そういうものなのだと強引に示し、そのうえで「じゃあ事態Cが発生した際に、どう行動するか」の部分に主眼を置いたストーリーとなっている。
 そのため全体的な説得力の点では物足りないが、軽さで押すぶん観やすい仕上がり。アル・パチーノもリラックスした演技で楽しませてくれる。

 そして、なんだかんだいって人生そのものがギャンブルだということが、本作からはよくわかる。何を信じるか、誰と行動を共にするか。それらは行く先もわからぬまま、あるいは確率と推論と一時的感情によって意識的・無意識的に選択する“未来への賭け”なのだ。

 たいていの人は、その賭けに負ける。もっといい選択はなかったのかと悔やんだりもする。でも、たとえ9連敗してもラスト・ゲームに勝てば負け分を取り返せるだけじゃなくプラスになると妄信して、今日も賭けを続ける。
 ブランドンのように直接的な賭けから足を洗えるものは少ないが、ブランドンの選択にしたって、実のところ「別の人生」へ向かうための賭けに他ならないのである。

|

« ニュー・ワールド | トップページ | ラッキー・ユー »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: トゥー・フォー・ザ・マネー:

« ニュー・ワールド | トップページ | ラッキー・ユー »