マウス・タウン ロディとリタの大冒険
監督:デヴィッド・バワーズ/サム・フェル
声の出演:ヒュー・ジャックマン/ケイト・ウィンスレット/イアン・マッケラン/ジャン・レノ/ビル・ナイ/アンディ・サーキス/シェーン・リッチー/ケイシー・バーク/デヴィッド・サチェット/ミリアム・マーゴリーズ
吹き替え:松本保典/甲斐田裕子/有川博/辻親八/天田益男/いずみ尚/石住昭彦
30点満点中18点=監4/話2/出4/芸4/技4
【ネズミのロディとリタは、街を救えるか?】
ロンドンのアップタウン・ケンジントンで飼いネズミとして暮らすロディは、シドという闖入者によってトイレから下水へと流されてしまう。たどり着いたのは、ネズミたちが暮らす街「マウス・タウン」。そこでロディは船乗りネズミのリタと悪党ザ・ヒキガエルとの争いに巻き込まれる。リタが奪った特製ケーブルを執拗に狙うザ・ヒキガエルと、そのイトコのル・カエール。そこにはマウス・タウンを壊滅に向かわせる策略が潜んでいた!
(2006年 イギリス/アメリカ)
【ぐっちゃぐっちゃの楽しさ】
ジェット・コースターのような展開と、説明しすぎと思えるくらいわかりやすぅいストーリー/シナリオ。英仏の国民性の違い、特に「イギリス人がサッカーのイングランド代表に感じている想い」などを理解していないと難しい部分もあるけれど、まぁあくまでお子さま向けの作品だ。
ただ、『ウォレス&グルミット』のアードマンと『シュレック』のドリームワークス、おのおのの良さ(というか特徴)が、妙な具合にミックスされた快作になっている。
すなわち、細かな動き&世界の構築と、悪ふざけにも思えるパロディ精神とグロ、その混血だ。
そりゃあもう動く。ボート・チェイスに見られるスピード感だけでなく、止まって考えているときでも眉がぎゅっと寄せられ、揺れるものは揺れ、しなるものはしなり、弾むものは弾む。ディテールへのこだわりはハンパじゃない。アードマンお得意のライティング(陰影のつけかた)も上質だし、高低や奥行きなど空間の広がり感・密度感もよく出ている。
主役がネズミであることを生かしてロープを噛み切る場面もあるし、ハンドミキサーが意外な使われかた&妥当な止まりかたをするなど、設定とアクションとを軽快に結びつける上手さもある。
面白いのは、ロディがヒュー・ジャックマンそのまんまだということ。ひょろっとして紳士的なアクションで。
いったんそう感じられると、リタ(近年観た中ではトップクラスの魅力を持つヒロインだ)は若めのケイト・ウィンスレットに思えるし、ル・カエールの斜に構えたところもジャン・レノとオーバーラップ、イアン・マッケランのザ・ヒキガエルはマヌケなマグニートーという感じ。
日本語吹き替えも、そのまんまとアレンジを混在させてなかなかの仕上がり。ロディはヒュー・ジャックマンより多少若々しい松本保典だけれど、映画の雰囲気を考えればこれで正解。リタの甲斐田裕子(トゥルーとかエレン・パーソンズとか)の凛とした声の張りは個人的に好みだし、ル・カエール=辻親八もジャン・レノの顔が浮かぶような声質と演技、ザ・ヒキガエル=イアン・マッケランなんかそのものズバリの有川博ですから。
いたずらに芸人やタレントを使う昨今にあって、かなり誠実なキャスティングだと感じた。
で、そんな魅力的なキャラクターたちが暴れるのは、ブラックユーモアとシニカルさと下ネタで満ちた世界。『ファインディング・ニモ』とか『モンスターズ・インク』といったライバル=ピクサーによる作品や、『ターミネーター』や『アフリカの女王』までパロディにしてみせる。
サウンドトラックも、あれやこれやで豪華だ。
英米の「好きなこと、面白いと思ったことを、テッテー的にやっちゃいましょー」スタジオが力を合わせて生まれた、ぐっちゃぐっちゃの楽しさを発散する作品である。
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