ユージュアル・サスペクツ
監督:ブライアン・シンガー
出演:スティーヴン・ボールドウィン/ガブリエル・バーン/ベニチオ・デル・トロ/ケヴィン・ポラック/ケヴィン・スペイシー/チャズ・パルミンテリ/ピート・ポスルスウェイト/ジャンカルロ・エスポジート/スージー・エイミス/ダン・ヘダヤ
30点満点中21点=監4/話5/出4/芸4/技4
【5人の悪党と、その陰に見え隠れする巨悪】
廃棄処分される銃を強奪した容疑で、5人の前科持ちが拘留される。腕利きガンマンのマクマナス、元汚職刑事キートン、切れ者のフェンスター、爆弾の専門家ホックニー、身体の不自由な詐欺師ヴァーバル。その6週間後、麻薬取り引きの現場となった港で船が爆発、数十人が死に、大火傷を負ったハンガリー人の運び屋とヴァーバルだけが生きたまま発見される。何があったのか? ふたりの口から語られるカイザー・ソゼとは何者なのか?
(1995年 アメリカ/ドイツ)
【すぐさまリプレイに耐えうる作品】
1回目はひとりで観て、あまりに面白かったので妻に勧めていっしょに観たのが2回目。「えっ、どういうこと?!」と妻、すぐさまリプレイで3回目。で、このたびが4回目の鑑賞。
この手の「えっ?!」系クライム・ムービーにハマる契機となったのは、もっとも映画に対して多感だった頃に観た『スティング』(ジョージ・ロイ・ヒル監督)であることは間違いないが、『追いつめられて』(ロジャー・ドナルドソン監督)でもガツンとやられ、決定打となったのが本作。
ここからさらに『ショーシャンクの空に』や『オールド・ボーイ』、『運命じゃない人』、『すべてはその朝始まった』などのマイ・フェイバリットへつながっていくことになる。
ま、それぞれ毛色も目指すところも全然違っている作品ばかりだけれど。
もはや何を信じていいのかわからない混沌へと叩き込み、それでいてハラハラ感のあるエンターテインメントとしても成立させ、しかも(ダース・ベイダーと比肩するほどの)カイザー・ソゼという名悪役を創出したシナリオが本作第一の魅力。ただ、しっかりとした“作り”もまた見逃すことはできない。
うつすべきものをうつすと同時に「見せてはいけないものは見せない」ことも徹底し、静かなテーマ曲とバンバン響くBGMを用いながら緩急を自在に使い分け、画面の明暗によって雰囲気も作り出す。
キャスティングも絶妙。オスカー受賞のケヴィン・スペイシーはいわずもがな、他の4人もそれぞれの役柄にピタリとフィット。アイルランド系、ヒスパニック、日系ブリティッシュ、イタリア訛り、ハンガリアン……と、人物設定・役者を多国籍にしたのも、犯罪というアンダー・グラウンドの広がりと多様性を醸し出すのに寄与している。
つまり、単に「ストーリー/シナリオが優れている」というだけの映画ではない、ということだ。ある意味「何でもアリ」を可能とする劇薬まがいの手法で調合されたお話を、演出その他の総合的な力により、1本の映画として、“すぐさまリプレイ”に耐えうるだけの上等な仕上がりへと持って行った作品である。
いや実際、ストーリー展開がわかったうえで“すぐさまリプレイ”しても面白いんだから、たいしたもの。というか、映画ってそもそもこれくらいの密度がなければいけないんじゃないか、とすら思ってしまう。
本作の登場以降、同様の「えっ?!」系作品が数多く上陸を果たすようになった点を考えても、映画史(あるいはミステリー史)におけるターニング・ポイントといえる作品。そして、自分の中にある“映画に対する価値観”を決めた作品の1本ともいえるだろう。
傑作。
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