ミス・ポター
監督:クリス・ヌーナン
出演:レニー・ゼルウィガー/ユアン・マクレガー/エミリー・ワトソン/バーバラ・フリン/ビル・パターソン/マッティエロック・ギブス/ロイド・オーウェン/アントン・レッサー/デヴィッド・バンバー/ルーシー・ボイントン
30点満点中16点=監3/話2/出4/芸4/技2
【ピーター・ラビット作者の恋】
1902年、ロンドン。ウォーン兄弟が経営する出版社のドアを叩いたのは良家の娘ビアトリクス・ポター。彼女が描いた「ピーター・ラビット」の物語は晴れて児童書として出版されることになる。実は、仕事がしたいと言い出したウォーン家の末弟ノーマンに“押し付けられた”原稿だったが、ビアトリクスの絵本は大ヒット。やがてビアトリクスはノーマンに求婚され、ノーマンの姉ミリーの勧めもあってふたりは結婚を約束するのだが……。
(2006年 イギリス/アメリカ)
【焦点のボヤけた伝記モノ】
恋愛モノというより伝記映画。ただしビアトリクスの幼年期が少し+ノーマンとの出会いから数年の出来事に絞って描かれているため、伝記映画にありがちな“とっちらかり感”はない。
とはいえ、密度があるかというと、それもない。
湖水地方の自然がビアトリクスにもたらしたもの、母との関係、ノーマンやミリーとの交流など、もっと語れる要素はあったはず。「さまざまなものが密接につながって『ピーター・ラビット』が生まれ、ビアトリクスの人生も作られた」という方向へ持って行くべきなのに、そのあたりをサラっとすませてしまっている。
本を出しました、それが売れました、ノーマンと仲良くなりました……、それだけに終始し、奥行きや深みには欠けるお話だ。
つまり、全体に抑揚のないストーリーを、レニーとユアンのお芝居に頼り切って作ったような仕上がり。
まぁ見どころはそのへんか。レニーの「困ったような笑顔」は、抑圧された中で自己を確立しようとするビアトリクスという役柄にピッタリだし、ユアンはもう完璧に英国紳士。『恋は邪魔者』とはまた違ったコンビネーションで楽しませてくれる。
エミリー・ワトソンら脇を固める役者も、美術も、キャッチーなテーマ曲もふたりの周囲をしっかりと包む。
が、いかんせんノッペリとした展開で、焦点がボヤけてしまっていることがツライ。
だいたい、遺産で暮らしている人々、ティーパーティーにメイド、女性は結婚して家を切り盛りするのが最大の仕事……といった、前時代的・異世界的な舞台設定の中での悲恋は観るものの感情移入を阻む。「売れました」というセリフだけで示される売れた事実など描写のいい加減さは映画としての流れを削いでいる。
もうちょっと「これが言いたかったんです」というものをハッキリさせ、その方向へ“ぎゆっ”とまとめていく映画であればよかったのだが。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント