« オーシャンズ13 | トップページ | ユージュアル・サスペクツ »

2009/02/24

エバン・オールマイティ

監督:トム・シャドヤック
出演:スティーヴ・カレル/ローレン・グレアム/ジョニー・シモンズ/グレアム・フィリップス/ジミー・ベネット/ジョン・グッドマン/ワンダ・サイクス/ジョン・マイケル・ヒギンズ/ジョナ・ヒル/モリー・シャノン/モーガン・フリーマン

30点満点中17点=監3/話3/出4/芸4/技3

【神に命じられ、箱舟を作る男】
 ニュース・キャスターのエバン・バクスターは「世界を変えよう」を合言葉として下院議員選挙に見事当選。家族ともども大豪邸へと引っ越し、大物議員のロングからも目をかけられて浮かれ気分だ。妻に促されて「世界を変えたい」と祈ったところ、本当に神が登場、「箱舟を作れ」と命じられ、彼のもとには船作りの材料とつがいの動物が続々と集まってくる。周囲からの白い目と家族の反対をしり目に、彼は黙々と巨大な船を作り続ける。
(2007年 アメリカ)

★ややネタバレを含みます★

【ごくごくフツーの、観やすいコメディだが】
 前作『ブルース・オールマイティ』で主演を務めたのはジム・キャリー。彼よりさらに日本人受けしなさそうなスティーヴ・カレルに替わってかなり心配だったのだが、意外と真っ当なデキ。むしろ真面目な顔からベタベタなお笑いまで、スティーヴ・カレルの芝居の幅広さに触れられたのは収穫だ。

 いやホント、真っ当、というかフツー
 まず、振り回される主人公、彼を振り回す存在、常識と良識のある妻、最後には理解を示す子どもたち、悪い大物……といったキャラクター設定にヒネリはなく、ストーリーを動かしやすそうな配置。
 初登院からハプニング、エバンのもとにわらわらと動物が集結する様子、神による力の誇示、さらなるハプニング、だんだんと造船作業に慣れていくエバンの姿、そしてクライマックス……と、過不足なく妥当な展開で流れるように進んでいく。剃っても剃ってもヒゲが生えてくるので大急ぎで剃る、みたいなおバカも挟みながら。

 つまり、崩れたりグダグタになったりせず、かといって弾けたり驚かせたりもしない映画。正直いって“別に観なくてもいい”レベルなんだけれど、逆にいえば安心感のある作りといえる。

 ただ、そんな中に割合と重要なメッセージをちゃんと潜ませるのが、このシリーズの良心的なところ。
 たとえば「Oh My God!」というセリフを何度も用いて人々の心の中にある神の軽さを考えさせたり、「祈りに対して与えられるのは機会」ということを神自身に語らせたり。
 またオープニングで流れる『Have you ever seen the rain』は、作中で降る晴天の雨を暗示するだけでなく、この曲のそもそもの意義(ベトナム戦争で米軍が降らせたナパーム弾を歌った反戦歌だそうだ)がそうであるように「利己的な人間が犯す過ち」という本作のテーマをも浮かび上がらせる。

 そして最後に神は説く。世界を救う箱舟(ark)とは「手当たり次第の親切(act of random kindness)」なのだと。
 どうしようもないところへ行き詰まろうとしている現代社会を、どうにか立て直すために必要なコトについて教えてくれる映画なんである。

|

« オーシャンズ13 | トップページ | ユージュアル・サスペクツ »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: エバン・オールマイティ:

« オーシャンズ13 | トップページ | ユージュアル・サスペクツ »