誘拐犯
監督:クリストファー・マッカリー
出演:ライアン・フィリップ/ベニチオ・デル・トロ/ジュリエット・ルイス/テイ・ディグス/ニッキー・カット/ジェフリー・ルイス/ディラン・カズマン/スコット・ウィルソン/クリスティン・レーマン/ジェームズ・カーン
30点満点中17点=監3/話4/出4/芸3/技3
【代理母誘拐。事件は急転していく】
うだつのあがらないはぐれ者、パーカーとロングボー。ある日ふたりは報酬100万ドルで代理母を務める女性の存在を知り、彼女=ロビンを病院から連れ去る。だが、お腹の子の父親は裏社会に通じるチダックだった。チダック、彼に雇われた運び屋のジョー、ロビン、担当医師でチダックの息子でもあるアレン、ロビンを護衛していたジェファースとオベックス、チダックの妻フランチェスカらの企みが交錯し、事態は思わぬ方向へ転がり始める。
(2000年 アメリカ)
【スピーディでスマートだが】
あの『ユージュアル・サスペクツ』のシナリオライター、クリストファー・マッカリーによる初監督作(もちろん脚本も)。
なるほど、先を読ませぬ展開、無駄なセリフを排除して「演技と映像でわからせる」配慮、「見せなくていいものは見せない」という作りなど、出世作にも見られた雰囲気はしっかりと残されている。
特に気が利いていると感じたのは、ある人物とある人物の意外な関係について、会話もないのに理解させてしまうところ。
うん、観客に事実を提示するのに“説明”など不要なのだ。
また、病院前での撃ち合いなどは、ためてためて、ドンパチとやって、いきなり死体が転がっていて……とリズム感良好。中盤にもカーラジオの雑音と音楽で「メキシコに入った」ことを知らせるところがあるし、終盤では細かいことを“すっ飛ばし”て小さな街でのシーンへ持ち込む。そこで繰り広げられるのは『ワイルドバンチ』や『明日に向って撃て!』を髣髴とさせる銃撃戦。
一見すると地味だけれど、映画的な面白さが詰まった作品になっているといえるだろう。
ただ“掘り下げ”が足りなかった点は否めない。パーカーとロングボーについてはもちろん、ジョーの厭世観、ロビンやアレンの焦り、フランチェスカやジェファースの目指すところなど、登場人物の行動の動機についてはもう少し背景を描いてやってもよかった。
せっかく、ライアン・フィリップの鋭さ、ベニチオ・デル・トロの渋み、あさはかなオンナ役にピッタリのジュリエット・ルイス、ジェームズ・カーンの存在感と、いいキャスティングを得ているのだから、それらにもっと実在感が付与されていれば、1ランク上の映画になったはずだ。
スピーディでスマート、作り手の才能を垣間見ることもできるが、それだけに余計、足りない部分が惜しまれる作品である。
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