真実の行方
監督:グレゴリー・ホブリット
出演:リチャード・ギア/ローラ・リニー/エドワード・ノートン/ジョン・マホーニー/フランシス・マクドーマンド/アルフレ・ウッダード/テリー・オクィン/アンドレ・ブラウアー/モーラ・ティアニー/スティーヴン・バウアー/スタンリー・アンダーソン/ジョン・セダ
30点満点中17点=監3/話4/出4/芸3/技3
【大司教殺しの真相はどこに?】
シカゴ。篤志家で人望の厚いラシュマン大司教がナイフで惨殺され、返り血を浴びた19歳の青年アーロンが容疑者として逮捕される。彼の弁護に名乗りをあげたマーティン・ベイルは「恩人を殺害する動機はない。大司教の上に誰かが馬乗りになっているのを見て、そこから“時を失った”ので何も覚えていない」というアーロンの言葉をもとに、第三者による犯行を主張する。だが、次々と意外な事実が明らかとなっていき……。
(1996年 アメリカ)
【及第点ではあるが……】
法廷・裁判モノは大好きなジャンルの1つ。当ブログでも、このカテゴリーの作品や法廷シーンが印象的だった映画を10本以上取り上げている。
謎解き、意外な事実、知恵比べ……といった要素は、ミステリーはもちろんハードボイルドな刑事ドラマからSFまでさまざまな作品に採り入れることができる。が、「なんでもアリ」や「行き当たりばったり」になってしまうこともしばしばだ。
その点、理性と良識が支配する法の場=法廷が舞台なら、その厳格さがいい意味での縛りになり、ご都合主義や常識からの逸脱が最小限に抑えられ、特有の緊迫感も生まれる。それが、このジャンルの作品の魅力につながっているのだと思う。
ただ、十二分に満足できる映画はそう多くないのも事実。本作も、別に悪くはないんだけれど「まあまあ」のレベルか。
シナリオ/演出とも破綻なくまとまっているし、見どころも多いとはいえるだろう。
聖歌をバックにゆるゆると進む序盤から血しぶきへと一転するスリル、アーロンの友人アレックスや事件の鍵を握るロイを登場させるタイミングのよさなどは上々。物語の中に潜む「人として耐えられないこと」という隠しテーマなど、いろいろなものが詰め込まれているのもいい。
特に上質なのが、クライマックス、検事のジャネットからアーロンへの反対尋問の場面。丁寧に各人物の表情を拾い上げて「さあ、いつ爆発する?」と観る者に緊張を与える。
種明かしから一気に終劇へと持ち込んだのも良心的で、ラストカットからは「正義も真実も、悪意によって葬り去られる可能性があるという事実。それを止める手立てを持たない無力感」が漂う。
そうしたサスペンスを、エドワード・ノートンの好演が支える。
いっぽうで、どうもノリ切れない雰囲気も残る。
たとえばマーティンとジャネットは元恋人でなくてもよかったはず、その設定にこだわるならそれなりの展開を用意すべきで、お話の彩りとしてはややお粗末。リチャード・ギアとローラ・リニーも、もっとテンションを上げ下げしたほうがラストカットも引き立っただろう。
そして、ちょっと冗漫。45分か、せいぜい90分でまとめられる内容を引っ張りすぎた印象だ。
いや実際、いまどきこの程度のサスペンスはFOXあたりで毎日観られるわけで。90年代の作品という点は考慮してあげなければならないが、もう少し全体的なテンポと緩急に気を遣っていればさらなる良作になったのではないかと思う。
●法廷・裁判関係のオススメ
『ニューオーリンズ・トライアル』
『モンスター』
『スタンドアップ』
『エミリー・ローズ』
『十二人の怒れる男』
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