ザ・スナイパー
監督:ブルース・ベレスフォード
出演:モーガン・フリーマン/ジョン・キューザック/ジェイミー・アンダーソン/アリス・クリーグ/ミーガン・ドッズ/コーリイ・ジョンソン/ジョナサン・ハイド/ビル・スミトロヴィッチ/アンソニー・ウォーレン/ネッド・ベラミー/トーマス・ロックヤー/メイナード・エジアシー
30点満点中16点=監3/話3/出4/芸3/技3
【暗殺者と父子、森の中の追跡劇】
妻を亡くした体育教師のレイは、反抗的になった息子クリスとの対話のため森へとキャンプに出かける。いっぽう、さる重要人物の暗殺計画を進めるカーデンは、自動車事故に巻き込まれ、入院先の病院で逮捕されてしまう。護送中に逃げ出したカーデンだったが、森の中でレイと遭遇、レイは手錠姿のカーデンを連行しようとする。そこに迫るカーデンの一味、そして政府の陰謀……。レイ、クリス、カーデンの決死の逃走が始まる。
(2006年 アメリカ/ドイツ)
【こことここを、こうしていれば】
前半部、レイとクリスがカーデンに出会うまでのパートで、相当のシーンがカットされているのではないか。いや、後半部にしても「こういう描写が必要なんじゃないの?」「こういう場面があってもいいんじゃないの?」と感じることが多々あって、なんだかゴッソリと抜け落ちているような印象を抱かせる。
まぁそのおかげで90分強の短尺、テンポのいい仕上がりになってはいるものの、厚み・深みには欠けている。
別に“つまらない”わけじゃない。でも、もっと“面白い”ものにできたはずだ。
たとえばウェインライト署長がレイにクリスを引き渡す際に「戻ってくる気はないか?」と訊ねる場面があれば、その後のレイの、元警官としての活躍にも説得力が出ただろう。カーデンとレイたちが森の中でいっしょにいることを署長が知って……といった展開も考えられる。
下見に来た暗殺者グループのひとりを不審に思ったレイが捕まえて、そのおかげで新しい奴がグループに加わった、なんてのも面白い。森の中でのアクションも、もう1つ2つあってよかっただろう。
そもそも、あのターゲットを「狙撃」してしまうと政府陰謀説が吹き出すのは必至なのだから、ハナっから事故に見せかける計画でなくてはおかしかったのではないか。
決定的に足りないのは、レイ&クリス父子とカーデンとの交流だろう。
クリスがカーデンに助けられ、カーデンが「ただの反射だ」と流すのはいいとして、そこで「それでも助けてくれたことは事実だ。ありがとう」というクリスのセリフがあったりとか、もう殺人は犯さないことを約束させてレイがクリスを見逃してやる(そもそも原題が『契約』なんだし)とか、息子を亡くしたカーデンの過去がちゃんと描かれているとか、そうした展開があれば、ラスト近辺へとキレイにつながったはず。
ヘリが揺れる、カーデンの側に着弾する、結局銃を持っていた男が撃たれて死ぬ、レイが「あんたを狙ったんじゃないか?」とカーデンにいう、カーデンはそれを否定しつつも不安になる……という場面を用意し、そこから話をふくらませていくことだってできる。
作りとしても、撮影ダンテ・スピノッティのシャープな絵は生かされているけれど、全体に凄みや迫力の点で物足りない。
モーガン・フリーマンの悪党ぶりは好きなんだけれど、「ここをこうすればなぁ」という思いばかりが募ってしまう、褒めるところの少ない作品。
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