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2009/03/19

ブラッド・ダイヤモンド

監督:エドワード・ズウィック
出演:レオナルド・ディカプリオ/ジャイモン・フンスー/ジェニファー・コネリー/アーノルド・ヴォスルー/アントニー・コールマン/カギソ・クイパーズ/ベヌ・マベーナ/デヴィッド・ヘアウッド/ベイジル・ウォレス/マイケル・シーン/マリウス・ウェイヤーズ

30点満点中19点=監4/話3/出4/芸4/技4

【これがダイヤモンド市場の現実】
 政府と反政府勢力RUFとの抗争が激化する1999年のシエラレオネ。内戦の陰にあるのは、大量に産出されるダイヤモンドの利権争いだ。RUFに囚われて鉱山で働かされるソロモンは、大粒のピンク・ダイヤを発見、密かに埋める。「お前の家族を取り戻すにはダイヤが必要だ」と彼に近づく密輸業者ダニー・アーチャー、そうした“血のダイヤ”が市場に出ていることを暴こうとするジャーナリストのマディー。3人の危険な旅が始まる。
(2006年 アメリカ/ドイツ)

【すべてはイコールで結ばれる】
 土、美しい緑、うごめく人々、激しい戦闘といったアフリカの現実を余さずすくい取るため、オール・ロケと思しき製作体制、迫力ある特殊効果と音響、手の込んだ美術、適確な撮影・編集……など「しっくりした作り」が貫かれる。
 出演陣も上々。荒っぽい訛りと鍛えられた動きを駆使して悪漢を演じ切ったレオナルド・ディカプリオも、慟哭に“父親”を感じさせたジャイモン・フンスーも、価値観の大きなブレという難しい役柄を与えられたディア=カギソ・クイパーズ君も、しっかりと各人物をまっとうする。
 さまざまな要素がハイレベルで混じり合い、完成度の高さにつながった映画だといえるだろう。

 社会派の側面も持ちながら、と同時に、アクションとサスペンスの風味をガンガンと押し出し、さらにはレオ様を“カッコよく”描いて、暗いテーマの割に観ていて飽きないエンターテインメント色の濃い作品に仕上げられている。それが、正解。
 なぜならより多くの観客を呼び、「伝えたいことを伝える」ことを求められた映画なのだから。

 ラスト近く、ダイヤモンドと死はイコールだと叫ばれる。だが、イコールで結びついているのは何もその2つだけじゃない。
 白人と黒人が手を取り、武器を売った相手と戦い、昨日は殺られる側だった人が今日は狩る側にいる。彼の地では、あらゆるものが等しく結びつく。そして死=ダイヤモンドは、いくつかの手を経てマーケットにたどり着き、僕らの生活とイコールの橋が架けられる。
 ダイヤモンドを介しての橋だけじゃない。ヒップホップは「ノレる音楽」として世界中で聴かれている。土の中に立つヒルトン・ホテル、ヒルトン一族の出であるパリス、そのスキャンダルに興味を示す消費者……。アフリカは世界とつながっている。
 アーチャーは「アフリカ生まれの白人」である自分のアイデンティティや居場所について悩んでいるようだが、結局のところ、どこに生まれ、どのように過ごそうとも、すべて人間は“愚かさ”においてイコールで結ばれるのだ。

 差があるとしたら、アフリカの人々が状況を「選べない」のに対して、先進諸国はこのような状況に陥ることを避けるための道を「選ばなかった」という点だろう。その差は、いかにも大きい。

 フェア・トレードで行こうじゃないか。無知から脱しようじゃないか。そうした精神は“血のダイヤ”的状況より、いくぶんかマシかも知れない。けれど「ダイヤモンドを指や胸に煌かせる」という価値観を無条件に受け入れてカラーとカットとクリアリティとカラットにこだわっている限り、きっと本質的な解決にはならないのだ。

 家族が何よりも強くイコールで結ばれる世界。その“救い”は、僕らが何かを「選んだ」先に待っている。

●アフリカの現実
『ザ・インタープリター』
『ナイロビの蜂』
『ホテル・ルワンダ』
『すべては愛のために』
『ツォツィ』
『ラストキング・オブ・スコットランド』

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