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2009/03/27

フローズン・タイム

監督:ショーン・エリス
出演:ショーン・ビガースタッフ/エミリア・フォックス/ショーン・エヴァンス/ミシェル・ライアン/スチュアート・グッドウィン/マイケル・ディクソン/マイケル・ラムボーン/マーク・ピッカリング/フランク・ヘスケス/エミリア・フェントン/ダフネ・ギネス/ジャレッド・ハリス

30点満点中18点=監4/話3/出3/芸4/技4

【静止した時間の中で、僕は見つめる】
 恋人スージーと喧嘩別れしたばかりの美大生ベンは、彼女のことを忘れられず不眠症に陥る。眠れない時間をスーパーマーケットでのアルバイトに充てることにしたベン。そこにいたのは、イヤミな店長、イタズラ・コンビのバリーとマット、カンフーおたくのブライアン、そして、ちょっと気になるレジ係のシャロン。やがて時間を止める力を身につけたベンは、静止した世界でスーパーの客たちをデッサンするようになるのだが……。
(2006年 イギリス)

【モラトリアム・ラブ・ロマンスの佳作】
 時間を止められる、というアイディアから派生するあれやこれやは、意外と少なくてアッサリ。むしろ「なぜ時間を止めなければならないのか?(または止まらなければならないのか)」という部分について考えさせる、内向的なお話。

 そう、内向的で内省的。1人称視点に始まり、モノローグで日常と想いが綴られ、恋の痛手を負って進む方向を見失ったベンの内面の映画として作られている。
 彼がモヤモヤとした時間を過ごすリアルと自由なフローズン・タイム、あるいは現在と過去とはシームレスに描かれて、そのどちらもが彼にとっての現実であり、ベンという人物を形成しているものであると知らせる。やや大仰な音楽は、ベンの中に渦巻くモラトリアム特有の“得体の知れないぶぅわぁ~っ”を表現する。

 うむ、失恋した20代の男なんてのは、もうどうにでもなれ、もうどこにも行きたくないと、勝手に流れる時間に身をまかせ、静止した世界をさまようものなのだ。押井守的なシュールさ、はたまたミシェル・ゴンドリー的な切なさをたたえて、静かに「ベンの内面の映画」は進んでいく。

 印象的なのは「あかり」だ。天井の照明がうつされたり、あるいは顔に陰影がつけられたりして、光源のありかを意識させるような画面。モヤモヤと過ごすベン(そして僕ら)の日常の、どこかに、どこにでも、ふとした瞬間に、明るいところへと導いてくれる光は潜んでいるのである。

 やがて、閉じこもるために作られた「静止した時間」は、「強烈な一瞬の思い出」へと意味を変えるようになる。
 ネガティヴだけれど自分を見つめ直すためには必要な「静止した時間」も大事だけれど、大切な誰かと心に刻み込む「その一瞬」のほうが、ずっと素敵なものに決まっている。

 終わった恋から次の恋へ、うだうだと暮らす自分から歩き出す自分へ、その変遷を、ユニークなアイディアと幻想的な画面で表現した、なかなか味のある作品だ。
 本作や『終わりで始まりの4日間』が持つ、「若さゆえの、どうしようもなさ」というものを描いた映画を、しっかりと“感じられる”自分でありたいと思う。
 まぁ40歳を超えてそういう感傷はどうかという疑問もあるけれど。

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作品情報 タイトル:フローズン・タイム 制作:2006年・イギリス 監督:ショーン・エリス 出演:ショーン・ビガースタッフ、エミリア・フォックス、ショーン・エヴァンス、ミシェル・ライアン あらすじ:失恋のショックで不眠症になったアーティストのベン。眠れないため、深夜のスーパーマーケットでのアルバイトをはじめる。不眠症がエスカレートして、ついには自分以外の時間が止まってしまう。 ...... [続きを読む]

受信: 2010/08/08 02:13

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