あるスキャンダルの覚え書き
監督:リチャード・エアー
出演:ジュディ・デンチ/ケイト・ブランシェット/ビル・ナイ/アンドリュー・シンプソン/トム・ジョージソン/ジョアンナ・スキャンラン/ジュノ・テンプル/マックス・ルイス/マイケル・マロニー/ショーン・パークス/スティーブン・ケネディ/アンヌ=マリー・ダフ
30点満点中16点=監3/話2/出4/芸3/技4
【どうしても親友が欲しかった】
労働者階級の子どもたちが通う、さほど質の高くない中学校。歴史の教師バーバラは、同僚を観察し、日記を綴る退屈な毎日を過ごしていた。そこへ美術教師のシーバが赴任してくる。年の離れた夫や知恵遅れの子どもらと暮らすシーバに自分と同じ孤独のにおいを嗅ぎ取ったバーバラは、次第に彼女との距離を縮める。シーバが15歳の男子生徒スティーブンと関係を持ったことで、さらにバーバラとシーバの関係は微妙なものになっていく……。
(2006年 イギリス)
【さすがの芝居を見せてくれるが】
ちょっとした足の運びや指の動きにまで“演じる”という気概が満ちているジュディ・デンチと、事が進むにしたがって顔の形までも変わっていくように感じられるケイト・ブランシェット。ふたりの名女優は、さすがの貫禄を示す。
その芝居を克明に写し取るため、カメラは彼女たちの直近で回る。これはもう明らかに、ふたりの演技を観るための映画。あるいは、ふたりが演じるバーバラとシーバの、やや質は異なるけれどともに持つ「身勝手さ」を味わうための映画だろう。
ただし。
こちらとはまったく共通点のない「イギリス人女性の生きかた」を描いているという点を割り引いても、迫ってくるものは少ない。恐らくは出来事や展開や感情表現の連ねかたが、映画的ではないからだろう。
小さな支配にこだわるバーバラの歪んだ寂しさ、自制心のないシーバの愚かな寂しさ、なにげない言葉が人を傷つけてしまうこと、けれどそれは往々にして傷つけられる自分にも責任があるという事実……などは伝わってくるのだが、それを出来事とお芝居だけで表現しようとしている。
小説なら、出来事の羅列と会話で物語を構成し、行間から心情・心理を読み取らせたり想像することを強いるのもアリだろうが、それをそのまんまフィルムにしただけでは映画にならない。
並べられている出来事じたいも、ふたりのキャラクターも、そう強烈なわけではない。
新聞記事の裏側にはこういうことがあった、という作りになっているわけだが、たとえその裏側を知ったとしても、結局のところ新聞記事を読んだだけの人と同じような感想しか持ち得ないのだ。
つまり、「ふぅ~ん」。
歴史モノかと思わせるほど重苦しい弦のサウンドトラックも仰々しくて、「いや別に、そんなたいしたことではないだろう」と感じてしまう作品。
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