アドレナリン
監督:マーク・ネヴェルダイン/ブライアン・テイラー
出演:ジェイソン・ステイサム/エイミー・スマート/ホセ・パブロ・カンティージョ/エフレン・ラミレス/ドワイト・ヨーカム/カルロス・サンス/レノ・ウィルソン/エディ・ガセッジ/グレン・ハワートン/ジェイ・クサラ/キーオニー・ヤング/ヴァレリー・レイ・ミラー
30点満点中17点=監4/話3/出3/芸3/技4
【走り続けないと、死ぬ】
香港マフィアのボスを暗殺した殺し屋シェブ・チェリオス。だが商売敵のリッキー・ベローナに捕まり、謎の注射を打たれてしまう。注入されたのは死に至る中国製の合成毒、その効き目を遅らせるのはアドレナリン。組織のボスであるカリートにも見放されたシェブは、オカマのケイロや恋人のイヴを巻き込みながら、生き延びるため、ベローナへの復讐を遂げるため、あの手この手でアドレナリンを分泌させてロスの街を疾走する。
(2006年 イギリス/アメリカ)
【手段のためには目的を選ばず】
ワン・アイディアものというより、たぶん「こんな感じで撮りたいよね」で始まった企画。思惑通りの、スピード感豊かな映像が連ねられる。
色やパースをイジったり、揺れたり一人称視点だったりズームやジャンプカットを使ってみたり、心音に合わせてクローズアップしてみたり、と、トニー・スコットばりに“落ち着かない絵”を短く畳みかけてくる。
ネヴェルダイン監督自らがカメラ・オペレーターを務めているという荒業からもわかるように、まずこういう「撮りたい絵」があったんだろう。そのうえで「じゃあこんな話・設定で」とストーリーをデッチあげたのかも。手段のためには目的を選ばず、といったところか。
そうやって生み出されたのは、なんともハチャメチャなチェイス・ムービー。アドレナリンを求めてシェブはぐっちゃぐっちゃとロス(目いっぱいに多国籍)の街を荒らしまくるわけだが、ふむ、死にかけている人って、笑えるんだなぁ。
手術着だの鼻スプレーだのプーマのジャージだの『Google Earth』だの、およそ殺し屋とは縁遠いマヌケなアイテムを散らし、ニヤリクスリとさせながら突き進む。
ただ、快作になり切れていないのはなぜだろう。
ひとつには、ジェイソン・ステイサムってこういう目にあって不思議じゃない雰囲気だよな、という点。意外性が足りないわけだ。設定から考えうる展開から大きくハミ出すことなく、ほぼ1本道でクライマックスまで突っ走るのも、スピード・アップには貢献しているが驚きを排除することになっている。
つまり、ハマリすぎているんだな。
笑いを避けてサスペンスフルにまとめるか、それとも主人公を殺し屋じゃなく巻き込まれた善良な人間にしてコメディへと走るか、という選択肢の中間で勝負した結果、どうもムズがゆい全体像になった、ともいえる。
それにせっかくの映像センスも、それがスピード&ユニークにとどまっていて「うわっ、こういう見せかたもあったか」という感嘆とか、状況をさらにワクワクハラハラしたものにする“内容と見た目の密接な関連”へと至っていないようにも思える。
まぁ「やりたいことをやり抜きました」的な仕上がりにはあるし、十分に面白さのある映画ではあるんだけれど、どこか突き抜けることのできなかった作品。
続編を同スタッフ・同キャストで作るらしいけれど、パート2ではそのへんがクリアされて「見た目とワン・アイディアの面白さを超えた面白さ」を持つものとして誕生して欲しい。
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