F.R.A.T./戦慄の武装警察
監督:デヴィッド・J・バーク
出演:ジャスティン・ティンバーレイク/LL・クール・J/ディラン・マクダーモット/ジョン・ハード/ケイリー・エルウィズ/ロゼリン・サンチェス/パイパー・ペラーボ/ダミアン・ウェイアンズ/ケヴィン・スペイシー/モーガン・フリーマン
30点満点中17点=監4/話2/出5/芸3/技3
【武装警察の活躍、しかしその陰には……】
警察の緊急特攻チーム「F.R.A.T.」の活躍により、街の犯罪発生率は劇的に低下。だがF.R.A.T.の内情は、冷酷かつ非道、事件の真相を捻じ曲げることも厭わず、政界・司法・大企業とも汚い関係で結びついていた。F.R.A.T.が関わったある事件に不審を感じた新聞記者ポラックは独自に取材を始めるが、編集長アシュフォードは彼を解雇、さらにはF.R.A.T.の隊長ティルマンやエース格ラゼロフが彼の行動を妨害し……。
(2005年 アメリカ)
【大枠よりディテールを楽しむ】
ポラックにはジャスティン・ティンバーレイクよりもうちょっと落ち着きのある役者がよかったとも思うが、悩めるクール・Jはまずまず、ケヴィン・スペイシーやモーガン・フリーマンといった大御所にもそれなりの見せ場があり、狂気のディラン・マクダーモットはカッコイイし、パイパー・ペラーボは可愛いし。
いわゆる“スター”はいないけれど、豪華で見ごたえのあるキャストだ。
ただ、各キャラクターの深部・背景はほとんど描かれることがなく、とにかく役者たちの存在感で押し通すような作り。「モーガン・フリーマンなんだから、ただのクーポン・キングじゃないってことを皆さん察してくださいねー」とか「ほら、ジョン・ハードって、こういう汚いボスに適役でしょ」みたいな。不思議な説得力でラストまで進める。
つまり、お話としてはやや物足りない作品。F.R.A.T.のやり口、ティルマンとラゼロフの関係、レイフの価値観、アシュフォードの立ち位置、ウォレスの思惑……など、本来なら必要な部分をバッサリと割愛、100分未満にまとめたために、厚み・深み・ふくらみ・切なさのない映画になってしまっている。
これらを盛り込み、必要悪、ジャーナリズムの功罪、政治を円滑に動かすための現実主義、といったテーマへグイグイと踏み込んでいけば、もっと上質で訴えるもののある映画に仕上がったと思うのだが。
せっかく「横柄で貧乏なのは社会的ハンデ」とか「利口(なジャーナリスト)なら、今ごろは大富豪になってる」なんて、世の真理を突いたセリフも散らしてあるんだし。
いや実際、演出や語り口には高いポテンシャルを感じるのだ。
走っているクルマの前方から助手席の人物をうつすアングルとか、臨機応変なカメラワークなどは、なかなかにシャープ。主役の頭にマスタードがかかって、それでもマヌケに見えない冒頭の銃撃戦も面白い。
ポラックの恋人ウィローが彼の首を撫でて微笑むだけで「この記事は認めるわ」ということを示したり、危機回避に用いられる自転車と干草をサラリとうつしておいたりなど、見せてわからせる“描写の上手さ”もある。大切なデータが収められたCD-Rがメモ用紙で乱雑に包まれているところなんかも、妙にリアル。
そういうディテールのよさがあるのだから、誰か「お話に深みを与えられる人」がシナリオに加わっていれば、それだけで評価は何倍にも上がったんじゃないかと思う。
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