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2009/04/04

ワルキューレ

監督:ブライアン・シンガー
出演:トム・クルーズ/ケネス・ブラナー/ビル・ナイ/トム・ウィルキンソン/カリス・ファン・ハウテン/トーマス・クレッチマン/テレンス・スタンプ/エディ・イザード/ケヴィン・マクナリー/クリスチャン・ベルケル/ジェイミー・パーカー/デヴィッド・バンバー/トム・ホランダー/デヴィッド・スコフィールド/ケネス・クラナム/ハリナ・ライン/ウェルナー・デーン/ハーヴェイ・フリードマン

30点満点中17点=監4/話3/出4/芸3/技3

【ヒトラー暗殺計画、始動】
 各地で敗退を続けるドイツ軍。総統ヒトラーに対して疑念と反感を抱く将校も増えていた。クーデターはすべて未然に阻止されていたが、反乱分子たちは新たな作戦を立案する。まず爆弾でヒトラーを暗殺。すかさず、非常事態の際に予備軍によってベルリンを制圧する“オペレーション・ワルキューレ”を発動し、ゲシュタポや親衛隊を一掃しようというのだ。暗殺の実行役に選ばれたシュタウフェンベルク大佐の奔走が始まる。
(2008年 アメリカ/ドイツ)

★ネタバレを含みます★

【面白いが、フィニッシュに不満】
 ワルキューレといえば「戦争とは、こういうものだ」と突きつけた『地獄の黙示録』、ヒトラーといえば「妄執によって歴史は作られる」と教えてくれた『ブラジルから来た少年』、そしてブライアン・シンガーといえば「目に見えるものすべてを疑え」と告げた『ユージュアル・サスペクツ』だ。
 この3作のミックスを期待していたのだが、さすがにそこまで望むのは無理があったか。

 作りは、しっかりしている。脚本はクリストファー・マッカリー、撮影はニュートン・トーマス・サイジェル、音楽・編集はジョン・オットマンと、シンガー組ともいえるメンバーが集まって、安定感も臨場感もたっぷり。アクション的な見せ場はそれほど多くないのだが、120分を一気に見せ切るパワーはある。

 特に印象的だったのは3つの点。
 屋根のない教会が暗示するナチス・ドイツの未来、狭いサロンと総統の直近で歴史的計画が進められる“異様さ”など、世界の見せかたが上質。
 視線、強張った表情、手の位置などで各人の感情や緊張感を表現していく演出プランも手堅い。
 王にも兵にもなりうる。そんな子どもたちの姿を見て決意を固めるシュタウフェンベルク。この場面も彼の動機付けとして効いている。

 役者たちも、またいい。安っぽい正義感や熱意からではなく「国と家族の未来を守るために必要なこと」として計画にあたるシュタウフェンベルクのトム・クルーズ、寄せた眉と立ち姿に不安を漂わせるオルブリヒト将軍のビル・ナイ、野心と保身との混沌の権化たるフロム将軍のトム・ウィルキンソン、三者が対峙する場面の“静かなヒリヒリ”が見事だ。

 ただ、こうしていくつかの素晴らしいパーツはあげられるものの、映画として大成功しているかといえば、そうとはいえまい。

 計画が失敗に終わるのは観客にもわかっていること。その前提に立ったうえで「じゃあ、どうスリリングに見せるか?」「どう味つけし、飛躍させるか?」という部分が本作のキモとなるはず。
 で、意外な人物の裏切り、暗殺に成功するがその事実は隠匿される、ヒトラーの影武者登場……などといった展開を予想していたんだが、結局はほぼ史実通り、すなわち“不運な偶然”に落ち着く。

 そこが不満
 まぁ、この事件についてはかなり詳細な記録が残っているらしく、大ボラを吹くわけにもいかなかったのだろう。それに序盤から中盤にかけては、前述の通りかなりヒリヒリとさせてくれる。
 が、クライマックスに関しては「ブラント大佐がカバンを奥に押し込んだため、ヒトラーは爆発の直撃を免れて助かった」「でもシュタウフェンベルクは作戦が成功したと思い込んだ(あるいは思い込もうとした)」というところを、もっと適確に、もっと畳み掛けるように描くべきだったろう。
 もしくは「結局は失敗する作戦に、心血を注ぐ男たちの哀しみ」という方向で語り、ラストは「たったそれっぽっちの誤算で失敗する虚無感」でまとめてもよかったはずだ。
 現状では、盛り上げるだけ盛り上げておいて“ただ失敗した”“それでもゴリ押しした”という肩透かし的な流れになってしまっている(ホントにヒトラーは生きているのか、という猜疑心を抱かせる作りではあるが)。

 NHKの朝ドラか大河なみに、しょっちゅう説明字幕が入る点に辟易。そりゃあ登場人物が多いうえにドイツ人名は長ったらしくてわかりにくいけれど、個性的な役者を揃えているんだし、「こいつは敵」「こいつは味方」とハッキリしているんだから、何もそこまで……。「ヒトラー総統」まで字幕で出てきたときには、観客をナメてるのかと思ったよ。

 そんなわけで、十分に面白く、十分によくできた映画ではあるけれど、フィニッシュの部分でちょっと詰めの甘さが残ったかな、と感じる作品。

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