ディセント
監督:ニール・マーシャル
出演:シャウナ・マクドナルド/ナタリー・メンドーサ/アレックス・リード/サスキア・マルダー/マイアンナ・バリング/ノラ=ジェーン・ヌーン/オリヴァー・ミルバーン/モリー・ケイル
30点満点中18点=監4/話2/出4/芸4/技4
【未踏の洞窟、闇に包まれた6人。出口はあるのか?】
夫と幼い娘を事故で亡くしてから1年。少しずつ立ち直ろうとしていたサラは親友ジュノとベスに誘われ、昔のように“冒険”を楽しむことにする。レベッカ、サム、ホリーを加えた女性ばかり6人は、山間にある深い洞窟へと降下する。だが、突如の崩落で閉じ込められる彼女たち。しかも安全だと思っていたそこは、地図すらない、ジュノが身勝手に選んだ未踏の場所だった。出口を求めて地下を彷徨う6人を待ち受けていたのは……。
(2005年 イギリス)
★ネタバレを含みます。読む前に観て怖がりましょう★
【作りの確かさ】
シリアスな前半から一転、後半は怒涛のバカ・ムービーへ。いくら“冒険好きのオネーチャンたち”とはいっても、いやいや、あんたら凄すぎ。バッタバッタと強すぎます。
考えてみれば、サラが家族に寄せていた思いの深さもしっかり盛り込まれているとはいい難いし、6人いる割にはキャラクターの描き分けは不十分。恐らくタイトルは「降下」と「人としての堕落」のダブル・ミーニングだと思うが、これまた「人として」という部分への突っ込みが足りない。
全体として「なんじゃこりゃ」的、どこへ話を持って行きたかったかも曖昧、最後に残る感想は「シロウトの無茶ほど怖いモンはないよね」くらい、という、トンデモまで一歩前のお話だ。
まぁそのB級テイストも面白味といえば面白味かも知れないし、序盤の山小屋でのシーンなんか女どうしのにぎやかさの中にサラの“陰”をポンと入れたりしてなかなか見せるんだけれど、決してデキのいいシナリオでないことは確か。
ただ、本作のポイントは、そこじゃない。
凝りに凝ったカメラワーク、スピーディな編集、いずれも極上だ。かといって奇をてらいすぎているわけではなくて、実に適確でスリリング。
望遠から広角までを適時使い分けて、クレーンも回り込みも俯瞰も駆使して、場面のバリエーションが森の中と洞窟内に限られている割には面白い画面を作ってくれる。冬の早朝の森や洞窟の闇など、その場の空気感をクリアに描き出した色調コントロールも見事。
車外~車内~車内から見た前方~グサリ……とつなぐ事故の場面、あるいは誤ってベスを殺してしまうシーンでの後方からの忍び寄り。怖さを忘れてワクワクゾクゾクするほど完成度の高い絵が続く。
ぼぅわぁ~んと盛り上げるサウンドトラックも味わい深く、観る者を包んでいくサラウンド感もコワキモチイイ。
何かが起こりそうで、何も起こらない。何かが起こりそうで、ホラやっぱり出た。そんな、スリラー演出の手堅さもある。
つまり“作り”の確かさをしっかりと感じられる出来栄えなのだ。まさしく「これから出世していくんだろうな」という監督の、出世作を目の当たりにしていることがよくわかる。
本作では脚本も監督自身が手がけているようだが、ちゃんとお話を構成できるスタッフ/ライターを用意できれば、かなりの傑作を生み出せるはず。いや実際、このまんまの“作り”で、ヘタにホラーやスプラッタに走らないサスペンス・アクションを撮りゃあいいのに、と思ったほどだもの。
それと、6人もいるんだからひとりくらい下半身直撃型の女性がいてもよかったのに。
大小の“甘さ”はあるものの、それを補って余りある可能性も感じさせる秀作(または習作)である。
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