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2009/05/23

スターダスト

監督:マシュー・ヴォーン
出演:クレア・デインズ/チャーリー・コックス/マーク・ストロング/ケイト・マゴーワン/メラニー・ヒル/シエナ・ミラー/ナサニエル・パーカー/デヴィッド・ケリー/サラ・アレクサンダー/ジョアンナ・スキャンラン/リッキー・ジャーヴェス/ジェイソン・フレミング/ルパート・エヴェレット/ピーター・オトゥール/ミシェル・ファイファー/ロバート・デ・ニーロ/イアン・マッケラン(ナレーション)

30点満点中17点=監3/話3/出4/芸4/技3

【流れ星と真実の愛】
 壁に囲まれた村“ウォール”に住む貧しき青年トリスタン。秘められた出生の過去を知った彼は、愛しきヴィクトリアの心をつかむため、壁の向こうに落ちた流れ星を探す旅に出る。いっぽう魔法の王国ストームホールドで後継者の座を争う王子たちも、王位の証となるルビーを身につけた流れ星の女性=イヴェインを追う。イヴェインの心臓で永遠の命を手にしようとする魔女ラミア、空の海賊シェイクスピアらも巻き込んだ大冒険が幕を開ける。
(2007年 イギリス/アメリカ)

【楽しさはあるが、主人公に不足もある】
 細かな部分での脈絡のなさや唐突さ、取っ散らかり感、あっけなさなどは洋物ファンタジーではお馴染みの作劇。ただ、過度に説明することなくポンポンとテンポよくお話は進むし、さまざまなパーツを一気に収束させていくクライマックスもまずまず。活劇ファンタジーとして一応のまとまりを見せており、同じくニール・ゲイマンによる『ミラーマスク』『ベオウルフ/呪われし勇者』に比べればはるかに真っ当な物語に仕上がっている。

 演出的にも、真っ当。全体に軽快さを保ちながら、画面に上手く散らされた闇と光、セプティマスが占い師を問い詰める場面でのヒリヒリ感、スピードを重視した剣闘など、随所にセンスを見せる。
 画面に見合った派手めのサウンドトラック、イマジネーションあふれる美術などともあいまって、見た目的な仕上がりも上々だろう。

 キャストでは、ミシェル・ファイファーの体当たり的力演が見もの。超のつく美形が醜い役をやると、こうして楽しいキャラクターが出来上がるという見本だ。ロバート・デ・ニーロも軽ぅくキャプテン・シェイクスピアを演じて存在感を示すし、クレア・デインズは劣化が収まって久しぶりに美しさを感じさせてくれた(人って後光が差すと美しさ2倍増しになるんだな)。シエナ・ミラーも可愛い。

 と、パーツそれぞれにはいい部分もあるのだけれど、映画全体としてはゾクゾクワクワクするようなところのないデキ。なぜかというと、たぶん、トリスタンに華がなさすぎるから。
 少しずつ青年から男になっていく雰囲気は出ているのだが、チャーリー・コックスは主演を張るようなタマではないし、キャラクター的にもなぁんの取り柄もなくて、のび太君以下の存在だ。

 思うに、本作の隠しテーマは父性。若気の至りで子をもうけてしまったトリスタンの父ダンスタン、残忍さをもって父としての威厳を示そうとしたストームホールド王、そして優しく力強く導く(ついでに、お父さんにだって知られたくないことはあるんだよ、という悲哀も見せる)キャプテン・シェイクスピア、そうした“父の存在”に翻弄されながらも真実の愛を見つけ出すトリスタンの成長が、この映画のキモであるはずだ。

 が、それを鮮やかに体現するには、トリスタンの個性が練り込み不足、チャーリー・コックスに魅力が不足。振り返ってみると、結局トリスタンってこれといったことやってないもんなぁ。
 この主人公が「ちょっと情けないけれど、ヴィクトリアやイヴェインという美形が惚れてしまうだけの隠れた魅力を持つ人物」として完成されていたならば、それに引っ張られて周囲の“父”たちとの対比も鮮明となり、ストーリーもより盛り上がって、カタルシスのある映画になったと思うのだが。
 楽しさはあるのだけれど、肝心な主人公/主演の部分で突き抜けられなかった作品である。

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