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2009/05/07

フィクサー

監督:トニー・ギルロイ
出演:ジョージ・クルーニー/トム・ウィルキンソン/ティルダ・スウィントン/シドニー・ポラック/マイケル・オキーフ/ジェニファー・ファン・ダイク/オースティン・ウィリアムズ/ケン・ハワード/ロバート・プレスコット/テリー・セルピコ/メリット・ウェヴァー/ショーン・カレン/デヴィッド・ランズベリー/デニス・オヘア/デヴィッド・ザイアス

30点満点中18点=監4/話3/出4/芸3/技4

【もみ消しのプロは、そこで何を消そうとするのか?】
 大手事務所に所属する弁護士でありながら、顧客の不始末を迅速にもみ消すことが専門の“フィクサー”として働くマイケル・クレイトン。こんどの仕事は、同僚アーサーの尻拭い。アーサーは農薬による汚染で告訴されている化学企業U・ノース社の代理人だったが、同社に不利益を及ぼそうとしていた。それを阻止しようとするU・ノース社の法務担当カレン。やがてアーサーだけでなく、マイケルの身にも危険が迫るのだった。
(2007年 アメリカ)

【格のある映画】
 しっかり作られているな、というのが素直な印象。
 ゆっくりと動いて、空間の広がり・奥行きと人物の焦りとを同時に描き出すカメラ。陰影と透明感に配慮された画質。全編を低く悲しく覆うBGM。前のカットのSEが次のカットに漏れたり、次のシーンのセリフが先行して前のシーンで聴こえたりといった音の“またぎ”によってもたらされる流れのよさ、「次に何が起こるのか?」と身構えさせる緊張感……。

 ある人物が殺害されるシーンも素晴らしい。1カットで見せ切る、極上のサスペンス。しかも髪の毛が落ちないようにヘアキャップをしている殺し屋たちのプロフェッショナリズムをサラリと盛り込む。
 外線ボタンを押す=電話を切る動作を見せるだけで「大切な情報が伝えられた」ことを示すなど、映画的なリズムも徹底されている。
 全体として、細かなパーツにまで気を配った作り、“格”のある映画だといえるだろう。

 トニー・ギルロイといえば、『ディアボロス/悪魔の扉』では“三重の大どんでん返し”で、『ボーン・アイデンティティー』シリーズでは極上のスピード感でワクワクさせてくれた人物。ただしメガホンを取るのは初めてであり、ジョージ・クルーニーも少し心配だったそうだが、すぐに「彼に任せてよかった」と感じたという。
 なるほど、映画トータルの作りの確かさを感じ取って、役者たちも安心して演技しているような雰囲気。ティルダ・スウィントンにウワサほどの凄みはなかったけれど、クルーニー、トム・ウィルキンソン、オースティン・ウィリアムズ君らの芝居をちゃんとすくい取る撮りかたになっている。

 話(事件)そのものは、思ったよりもアッサリ風味だ。ラスト、マイケルの選択に意外性はあるものの、昨今の犯罪モノの価値基準からすると単純で爆発力にも欠ける。
 が、本作のテーマはそこにあるわけではなく、このクソったれな世界でクソを垂れ流して生きる、マイケルやアーサーやティミーらの“クソのような自分への哀れみ”が主題。ヘンリーという未来ある無垢な子どもを配し、その眼前にいる大人=マイケルと観客の生きかたを問う内容である。

 この路線の映画には名作が多々あり、本作はそれらにちょっとだけ及ばなかったようにも思えるが、「こう撮ろう」という意志を垣間見られる点で秀作であろう。

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