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2009/05/26

ノーバディーズ・フール

監督:ロバート・ベントン
出演:ポール・ニューマン/ジェシカ・タンディ/ブルース・ウィリス/メラニー・グリフィス/ディラン・ウォルシュ/プルイット・テイラー・ヴィンス/ジーン・サックス/ジョセフ・ソマー/フィリップ・シーモア・ホフマン/フィリップ・ボスコ/キャサリン・デント/アレクサンダー・グッドウィン/カール・J・マチュソビッチ/ジェイ・パターソン/ジェリー・メイヤー/アンジェラ・ピエトロピント/アリス・ドラモンド/マーゴ・マーティンデイル/アンジェリカ・トーン

30点満点中19点=監4/話4/出4/芸4/技3

【老いた少年の冬】
 ニューヨーク州の郊外、雪に覆われ、特にこれといったことの起こらない小さな田舎町ノース・バス。サリー・サリバンは中学時代の恩師ベリル夫人宅に間借りし、いけすかない建築業者カールから半端仕事を請け負ってその日暮らしを続けていた。カールの妻トビー、不意に現れた息子ピーターと孫のウィル、別れた妻、相棒のロブ、ベリルの息子で銀行屋のクライヴ、警察官レイマーらとの関わりの中で、今日も寒い一日が過ぎていく。
(1994年 アメリカ)

【オトコとは、すなわちバカなり】
 バーでは注文をしなくてもビールが出てくるなど、みんなが顔なじみで腐れ縁であることをサラリと示す“粋”がある。カメラをゆったりと動かしてサリーとピーターとの間に流れる冷たい時間を表現する上手さがある。ベントン監督作では『プレイス・イン・ザ・ハート』もそうだったが、自然の中に人物を溶け込ませる美的感覚もある。軽快な音楽が、この町の平凡さを物語る。

 ただし、特に派手ではなく手堅い作り。それでも各場面から滲み出してくる心情の豊かさ。ウィルが“勇気を出す”場面の、なんと普通で、なんと温かなこと。
 いいシナリオがあって、いい役者がいれば、妙なことをせずきっちり撮るだけでいい映画が出来上がるという見本だろう。

 描かれるのは「誰もバカじゃない」というより「結局みんなバカ」という暮らし。バカな人間が寄り添いあって社会は営まれていること、必要なバカというものも存在するということを、本作は教えてくれる。
 たとえば「ベリルに礼をいえ」と諭されたサリーが、逆にベリルから「ありがとう」といわれる場面。あるいは勝つ見込みのない裁判を続け、その被告とポーカーに興じるサリー。そんなサリーを否定し、結局は自滅してしま人物たち。
 彼が“ありがとうをいわないバカ”を貫き、ルールやモラルに囚われずバカな生きかたをし、それを周囲も何となく認めてしまって「あなたが私の万馬券」だなんて、なついてしまうからこそ、この町では、それぞれの人がそれぞれの役目をまっとうすることができ、退屈な日常や失敗の数々に押し潰されることなく、上手く振る舞っていけるのだろう。

 そしてこの映画では、“バカ”がほぼイコールで“オトコ”と結ばれる。特別な存在になる必要なんてない。ただ、祖父と、父と、友だちと、そしてバカという、当たり前のオトコであれば、それでいいのだ。

 それにしても「男の中の男」という言葉の奥深さよ。そうかつまり「バカの中のバカ」ってのは、蔑みであると同時に最上級の賞賛でもあるわけだ。でもきっとサリーがいう通り、バカをやるってのも最初は上手くいかないものなんだろうなぁ。

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