ベオウルフ/呪われし勇者
監督:ロバート・ゼメキス
出演:レイ・ウィンストン/ロビン・ライト・ペン/ジョン・マルコヴィッチ/ブレンダン・グリーソン/クリスピン・グローヴァー/アリソン・ローマン/クリス・コッポラ/アンジェリーナ・ジョリー/アンソニー・ホプキンス
30点満点中16点=監4/話2/出3/芸3/技4
【勇者を苦しめ続けるのは、父の呪い】
兵士や腹心アンファースらと戦勝の宴に酔いしれるデンマークの王フロースガール。だがそこに異形の巨人グレンデルが乱入し、大勢が命を落とす。フロースガールとグレンデルの間には、何かいわくがありそうだ。グレンデル退治のため海の向こうから駆けつけたのは、勇者ベオウルフとその一団。見事にグレンデルを退けたベオウルフだったが、グレンデルの母と接触したベオウルフには、ある“呪い”がふりかかることになるのだった。
(2007年 アメリカ)
★ややネタバレを含みます★
【ワクワク感のないCGムービー】
CGをふんだんに使ったアクション作、という意識で観はじめたのだが、まさか「9割がたCG」だったとは。
生身・実写部分にも相当のデジタル処理が施されているのは明らかで、もうほとんど全編がコンピュータの中で作られたような仕上がり、『ポーラー・エクスプレス』の延長線上といったところ。『ワンダと巨象』っぽい場面やカクカクした動きともあいまって、テレビゲームのムービー・パートを思わせる映画だ。
CGであることを生かし、かなり大胆なカメラワークが採り入れられている。テクスチュアや背景にも気を遣っているのがわかる。キャストには古語やイギリス英語を喋らせ、無機質な表情をさせて、実写とCGとがスムーズに融合するような工夫も見られる。
いっぽうで、どうしても指先の動きに滑らさがなかったり、肩~腕にかけてのプロポーションが不自然だったり、前述の通りカクカクしたところもあったりして、リアルにしようとすればするほど「ああ……」という部分が前面に出てきてしまう。CGムービーの(現時点での)限界を感じさせてしまうデキであることは否めない。
また、打ち込み系のオープニング・テーマがちょっと安っぽく、あっと驚くようなデザイン・ワークも見られない。
アクションシーンはふんだんに用意されているけれど、ほとんどが夜、城内、洞窟でクライマックス以外に爽快感がないのも残念。全体に窮屈で、広がりや、想像力を喚起するパワーがない。
そもそもが、ふくらみのない伝説・寓話の映画化。名誉欲への戒め、あるいはゴールデンマンやドラゴンをレイ・ウィンストンが演じていることから伝わる「自らを滅す」というテーマはわかるのだが、それ以上のサムシングがまったくプラスされていない。
文庫本2ページほどの物語を2時間にふくらませた意欲は認めるが、お話やキャラクターの厚みとワクワク感に乏しく、「CGでとこまでできるかやってみた」程度の小粒な作品になってしまっているのが実情である。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント