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2009/06/11

僕の彼女はサイボーグ

監督:クァク・ジェヨン
出演:綾瀬はるか/小出恵介/桐谷健太/田口浩正/斉藤歩/遠藤憲一/小日向文世/吉高由里子/阿井莉沙/佐藤めぐみ/ドロンズ石本/納谷六朗/寺泉憲/竹中直人/吉行和子

30点満点中17点=監3/話2/出5/芸3/技4

【未来から来た彼女、その役目は?】
 ジローは、毎年11月22日には自分で自分にプレゼントを贈り、レストランでスパゲッティを食べるのがならわしという寂しき大学生。2007年の誕生日、彼は不思議な女性に微笑みかけられる。食い逃げは当たり前、好んだように騒ぎを起こす彼女。心をときめかせるジローだが、はるか未来からやって来たという彼女は姿を消す。それからちょうど1年、またも誕生日の夜に現れた彼女は、自分に課せられた使命を語るのだった。
(2008年 日本)

【可愛さと、楽しさと、惜しさと】
 彼女がサイボーグなのかアンドロイドなのかという議論は各所でなされているだろうから置いといて、この綾瀬はるかは、ヤバイくらいに可愛い
 ちょっと無機質な顔立ちと、意外と太い(ところが魅力の)「うがぁ」という叫び声、何を食って育ったんだと思うほどのプロポーションが役柄にマッチしているのはもちろんのこと。冒頭、2007年のね、あのウキウキ感と涙は反則的なまでに美しい
 ヘアスタイルとメイク、黒の革ジャンじゃなくて白のコート(『ターミネーター』の逆パロディなんだろうか)、あるいはスリムなプラグスーツといった衣装も、彼女の“サイボーグらしさ”を上手に引き立てる。
 小出恵介も上々。もともとこの世代の俳優の中ではかなり上手いと思っているのだが、今回もしっかりとした感情表現と台詞回しで安心して観ていられた。

 実質ふたり芝居の映画。申し分のないキャスティングだろう。ほかでは、このクラスの映画にしてはかなり頑張っている特撮やロケーションなどが印象的だ。

 ただ、ストーリー的なまとまりはやや不満
 アメフト部の誕生会や京劇でのドタバタなど、ありえない出来事が連続してコントじみて見える冒頭部は、後にエクスキューズが用意されているのでまぁいいとしよう。「強い女の子とヘタレ男子」という見慣れたフォーマットも、終盤で突如として急展開するところも、この監督にはそれが期待されているんだからOKだ。あまりに歴史を改変し過ぎている点も、この際スルーする。
 が、肝心のジローと彼女の精神的結びつきが、どうにも物足りないように感じてしまう。

 ジャレているだけではなく、ジローがモジモジしているだけでもなく、彼女がジローを助けるだけでもダメだろう。
 ジローも彼女にさまざまな事を教え、それにより彼女が少しずつ人間らしくなっていき、さらにジローが調子に乗って彼女を喜ばせようと奮闘し失敗する。そういう交流によって、お互いがかけがえのない存在であることを、けれどどこか“つながっていない”という寂しさをジローが抱え続けていることを、観客に示す場面が中盤にもっと必要だったのではないか。

 また、正義感は強いけれど弱いので何もできないジロー、とか、彼女のピンチにひとりで逃げてしまうジローというシーンがあれば、彼女の密かな行動に説得力が生まれ、あの親指を立てる仕草ももっとチャーミングなものとして感じられ、本作の裏テーマである「悲惨な出来事ばかりの社会に対し、何もできない自分の絶望感」だってより鮮明になったことだろうし、クライマックスもさらに感動的な盛り上がりを見せたはずだ。
 小出恵介いわく「ジロー=のび太」らしいが、のび太がのび太である由縁は『ドラえもん のび太の恐竜2006』で述べた通り。ジローがただのヘタレではダメなのだ。
 故郷のシーンも、それがジローの“その後”に結びつかないと、意味のないままで終わってしまう。

 全体的な流れとしてはいいのだけれど、独りよがりで性急な感じの否めない展開。せっかくラブストーリーに不可欠な“切なさ”のタネがあちこちに埋まっているのに、それを上手に芽吹かせてやれなかった、という印象だ。
 演出的にも、綾瀬はるかを可愛く撮ったことと劇場向けのスケール感を出せていたことは認めるものの、大きな驚きのない仕上がり。
 まぁちょっとヒネったボーイ・ミーツ・ガールとして楽しめることは楽しめるが、もっと面白くて感動的な映画になったのになぁと、惜しさを抱かせる作品だ。

 そんなわけで例によって、綾瀬はるかを俺にくれ!

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