バウンド
監督:アンディ・ウォシャウスキー/ラリー・ウォシャウスキー
出演:ジェニファー・ティリー/ジーナ・ガーション/ジョー・パントリアーノ/ジョン・P・ライアン/クリストファー・メローニ/リチャード・C・サラフィアン/メアリー・マーラ/バリー・キヴェル/ピーター・スペロス/イヴァン・ケイン/ケヴィン・マイケル・リチャードソン
30点満点中21点=監4/話4/出5/芸4/技4
【オンナふたりの犯罪計画】
5年の刑期を終えて出所したレズビアンのコーキーは、マフィアからアパートの改装という仕事を得る。隣の部屋に住んでいるのは、妖艶なヴァイオレット。彼女はマルゾーニ・ファミリーの幹部シーザーの情婦だったが、シーザーの凶悪さに耐えられず逃げ出したいと考えていた。やがて関係を持つコーキーとヴァイオレット。ふたりはファミリーの中で起こったトラブルを利用し、大金を奪って逃走する計画を思いつくのだが……。
(1996年 アメリカ)
【スタイリッシュ・フィルム・ノワール】
思えば1994年~1997年あたりって、犯罪映画界にとって芳醇な時代だったんだなぁ。『ショーシャンクの空に』に『レオン』、『ユージュアル・サスペクツ』に『セブン』に『L.A.コンフィデンシャル』……。練られた脚本とスタイリッシュかつ妥当な演出で“アイディアをアイディアだけに終わらせない”作品が続々と誕生した。ちょっと毛色は違うけれど、後のソリッド・シチュエーション・スリラー氾濫の契機となった『CUBE』もこの時代の生まれだ。
で、本作も間違いなく、上記と同じリストの中に並べられるべき映画。いや確かにこれ観たら「こいつらにカネ出して、もっと撮らせてやろう」って考えたくなるもの。
極端な寄り、大胆な俯瞰、グルグルまわるカメラと、多彩な画面で作られるヒリヒリとした空気。パイプから滴る水に漂うエロティシズム。ブリーフや真紅のトラックなどショッキングなアイテム。白、赤、幾何学模様、肢体などのコントラスト。コーキー(浮かれる、という意味があるらしい)という名前や「脚元に気をつけろ」といった看板に潜まされた皮肉。
ジャズとカメラワークと体のラインで“企み”が示され、想像・未来がいつの間にか現実・現在となる魔術的な演出で観る者を惑わせる。舞台はほぼアパートの室内に限られるのに、時制やシーン遷移を自由自在に操ることで必要以上に作品としての狭さ・小ささを感じさせないのも素晴らしい。
どこからどう割っても、憎らしくてシビレる作りだ。
キャスティングが、またいい。
妻はヴァイオレット役ジェニファー・ティリーの、甘えた声、悪女から怯えまでコロコロと変わる視線に“上手さ”を感じたようだが、コーキー役ジーナ・ガーションにも萌えたい。そこに立っているだけで男前、あるいは弱さを抱えたサディストとでもいうべき、プロポーション&「フっ」という溜息笑いが素晴らしく極上だ。
恋愛とか親子以上に“共犯者”は強い結びつきであるはず、ってのが個人的見解なのだが、それを見事に具現化するカップリング。このふたりだからこそ「昨日会ったばかりなのに、今日はもう共犯者」という展開にも説得力が生まれる。
女性ふたりに隠れて目立たないけれど、なまった英語とオロオロ視線で登場から“浅はかさ”を感じさせるシーザー=ジョー・パントリアーノも、なかなかの好演だろう。
ただ、先の読めない後半部のスリルは良質なのだが、ここに「ああ、それがあったか!」という驚きがあれば、とも思う。また、さすがに2回目となると初鑑賞の際のドキドキは薄まった。
それでも良作。スコッチでノドを焼きながら、美女ふたりの10分後を案じてヤキモキするのにちょうどいい映画だ。
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