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2009/07/02

マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋

監督:ザック・ヘルム
出演:ナタリー・ポートマン/ジェイソン・ベイトマン/ザック・ミルズ/テッド・ルジック/レベッカ・ノーザン/スティーヴ・ホイットマイア/オリバー・マスダ/クアンセティア・ハミルトン/ジョナサン・ポッツ/キエレ・サンチェス

30点満点中18点=監4/話3/出4/芸3/技4

【魔法のおもちゃ屋は閉店してしまうのか?】
 齢200歳を超えるというミスター・マゴリアムのおもちゃ屋には魔法のおもちゃがあふれ、今日も子どもたちが押しかける。支配人のモリーはピアノの道に打ち込むため転職を決意するが、マゴリアム氏は会計士の“ミュータント”ヘンリーを雇って書類と財産の整理を依頼、「私は消える。店はモリーに譲る」と宣言する。マゴリアム氏みたいにはなれない、ピアノも続けたいと悩むモリーに、9歳の店員エリックやヘンリーらは……。
(2007年 アメリカ)

【温かく読み取りたい】
 内外での評判があまり芳しくないようなので見くびっていたのだが、どうしてなかなか素敵な映画じゃないか。

 軽快なタイトルバックが、まずは楽しい。
 流れるように本編へ。ここでも、人物を広角で撮ったり上下の微妙なアングルにこだわったりして、その場感や店内の生き生きした様子を写し取っていく。「消える」と告げるマゴリアムさんの寂しげな表情と会計士ミュータントの無表情との温度差、モリーの心情の揺れを描き出す彼女の指先の動きなど、細かなところで気が利いている。

 ダスティン・ホフマンのトボケ具合が愉快。が、それ以上にナタリー・ポートマンがやっぱり魅力的だ。『終わりで始まりの4日間』でも等身大の悩める役柄をキュートに演じた彼女は、今回もリアル23歳の可愛らしさと不安とを見せてくれる。あと、ピアニストの腕ってホントにこういうムッチリズムがあるんだよね。

 そしてなにより“詰め込まれた主張”が、いい。
 ツボは「昔はよく遊んだ I DID WHEN I WAS KID」という、ヘンリーのセリフ(文字)。僕らはいったいいつから、用事を忘れて無邪気に遊ぶということをしなくなったのだろうか。
 子どもにとっては目に映る不思議なものすべてが魔法。“ただ”のモノが、見かたによって、あるいは信じることによって特別なモノになることもある。「自分は“ただ”の○○だから……」と諦めず、無邪気に“できる”と信じることで、誰にだって人を喜ばせる魔法は使えるはず。そんなことを、本作は教えてくれる。

 これってファンタジーではあるけれどファンタジーではなく、ファンタジー仕立てで「楽しんで生きること」「遊びを楽しむこと」を描いた作品ではないだろうか。
 監督ザック・ヘルムは『主人公は僕だった』の脚本家。あちらにも「すべての日常は“静かで特別な一瞬”で出来ている」というメッセージが込められていたが、本作にも、この作家ならではの「生きることに対する価値観」が詰め込まれているように感じた。

 もちろん、ラストにはモリーが無邪気にピアノ協奏曲を弾く姿が盛り込まれていて然るべきだったし、ヘンリーには「人形劇で遊んだ」という過去があってもよかっただろう。エリックを通じて「友だちを“作る”ことと友だちに“なる”ことの違い」を語ってもよかった。
 そのあたりの、本作のテーマと密接につながるエピソードや描写がズボっと削られているため“ただ”のドタバタ劇という後味を残す。それゆえ評価も低いのだろう。
 でも、温かく読み取れば感動できる要素が潜んでいる、そんな作品のように思える。

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