トランスフォーマー:リベンジ
監督:マイケル・ベイ
出演:シア・ラブーフ/ミーガン・フォックス/ジョシュ・デュアメル/タイリース・ギブソン/ジョン・タートゥーロ/ラモン・ロドリゲス/ケヴィン・ダン/ジュリー・ホワイト/イザベル・ルーカス/ジョン・ベンジャミン・ヒッキー/マシュー・マースデン/アンドリュー・ハワード/マイケル・パパジョン/グレン・モーシャワー/エリン・ナース/レイン・ウィルソン/ディープ・ロイ
声の出演:ピーター・カレン/マーク・ライアン/レノ・ウィルソン/ジェス・ハーネル/ロバート・フォックスワース/アンドレ・ソウグリゾ/グレイ・デリスル/トム・ケニー/ヒューゴ・ウィーヴィング/トニー・トッド/チャールズ・アドラー/フランク・ウェルカー/ジョン・ディクロスタ/マイケル・ヨーク
30点満点中18点=監4/話3/出3/芸3/技5
【オートボット&人類vsディセプティコン 第2章】
あの激しい戦いから2年。米軍の秘密部隊「ネスト」とオプティマス・プライムらオートボットは協力してディセプティコンの残党掃討作戦にあたっていた。いっぽう先の戦闘でキーとなったサムは大学へ。だが、機械に命を与えるオールスパークの欠片から“情報”を得た彼のもとにも危機は迫る。メガトロンの復活、ディセプティコンの首領ザ・フォールンの始動、倒れるオプティマス、サムの宿命……。戦いは、苛烈なものとなっていく。
(2009年 アメリカ)
【期待以上のパート2】
前作の感想をざっとまとめると「とんでもないクォリティのCG、スピードと迫力に満ちたアクション。ただし、盛りだくさんだけれど、まとまりを欠き、各要素が面白さへと直結していない。単調でクドくてリズムが悪い」といったところ。
よって少し心配だったんだけれど、「1作目なので気合い入れなくっちゃだし、わかりやすくもしなくっちゃ」という呪縛を解かれたか、思った以上にいいデキを示してくれた。
まずはCG。前作でも「背景の中への収まり、実写との一体感」は上々だったのだが、今回はさらに進化。豪胆なカメラワークと連動しながら、あるいは人間の動きの間を縫って、立体的にオートボットやディセプティコンが走って飛ぶ
重量感たっぷりの肉弾戦アクションがあるかと思えば、小型車やスポーツカー、ジェット戦闘機、さらには人型ディセプティコンも加わってスピーディかつ細やか。改造・修理もあるし、衛星との融合もあるし、描かれかたは実に多彩だ。
ピラミッドや空母や街並が崩壊していく様子も見事。もうどっからどこまでがCGなんだか、その境目は判別不能だ。
オートボットとディセプティコンのカラーリングを明確に区別してアクセントをつけて欲しかったとも思うが、前作同様・前作以上に、現在のCGの最高=標準レベルがこれなんだと、思い知らせてくれる。
エンドクレジットには、かなりの数の日本人スタッフの名前。この技術を国内にフィードバックしていただきたいものだが、まぁ無理。だって、カネと手間ひまのかけかたが、まるで違うんだから。
軍の協力、エジプトにヨルダンにパリにスミソニアン。ほんの数秒のカットにも贅沢なまでに物量を投入している。スケールや迫力だけじゃない。サムの部屋や寮内、ミカエラのバイク修理工場など、いずれ破壊される(しかもフォーカスのボケた背景として機能するだけの)ものでも手を抜かずにキッチリ作り上げている。
カネと時間をかけて、風呂敷を広げ、隅々まで作り込むことで面白さを倍化させる。ハリウッドにしかできない芸当だろう。
すべてのシーンに見せ場がある、というのも、ハリウッド製CG大作ならではの凄さだ。
古代が舞台となるオープニングに始まり、上海、サムの家、軍事基地、パリの街、大学の寮、廃工場、海底、惑星~宇宙空間、森林地帯、砂漠とピラミッド……と、あらゆる場面でスペクタクルが繰り広げられる。市街戦中心だった前回よりも幅が広がり、またサムらの生身のアクションも疎かにしないで、そりゃあもう息つくヒマのないほどだ。
ストーリー的には、当然ながら導入編だった前回との連続性を確保。オールスパークの欠片やサムの先祖に関わる話、メガトロンの復活、米政府内の対立、恋にユーモア、『キングコング』に『バッドボーイズ2バッド』にウンパルンパと、盛り込みもたっぷり。“つづき”らしさ、トランスフォーマーらしさを醸し出して前作ファンを喜ばせる。
いっぽう“堕天使”をモチーフに、運命という要素をプラスして伝奇モノに仕上げることで目新しさも創出。前作の「人とオートボット」から「サムとオプティマス」というピンポイントの関係に落とし込んだことも新しい魅力となっている。
多少唐突な展開だが、ただの続編ではなく、大きく物語を発展させていこうという意欲を感じる構成だ。
またスピルバーグの影も前作以上に感じる。“かくれんぼ”は『ジュラシック・パーク』~『宇宙戦争』~前作と続く伝統だし、ウジャウジャの小型ディセプティコンは『マイノリティ・リポート』だ。砂漠での銃撃戦は明らかに『プライベート・ライアン』で得たノウハウの活用だろう。
そこへ支配的に混じる、マイケル・ベイらしさ。あおりカット、スローで並び歩く軍人たち、バツっとしたリズム、ベタっとした色調。
両者のハイブリッド作品であることが、よくわかる。
キャラクターの散らしかたも楽しい。
サムは宿命を背負って成長する青年、ミカエラは強くてイロっぽい現代風ヒロイン、レノックスは勇敢で信頼できる軍人と、わかりやすいアクション映画にふさわしい配置。コミックメーカーとしては両親に加えてレオも仲間入りを果たし、ギャロウェイはわからず屋の政府代表の役割をまっとう、意外な活躍を見せる“あの人”もワクワクさせてくれる。
オートボットとディセプティコンの描写/設定も幅が広がった。思っていた以上に重要な存在だったオプティマス、涙を流したりアリスにイタズラを仕掛けたりなどより人間的になったバンブルビー(アーカイブ音声を合成して会話するあたりは、もっと広げてもよかったか)、愉快なザ・ツインズ、いかにもな親玉のザ・フォールン、意外とヘタレだがなかなかクタバラないメガトロン、その片腕のスタースクリーム、アリスも可愛いし、杖をついた爺さんはスパイスとなっているし、マウンティングまでしてみせるチワワのようなウィーリーは笑わせてくれるし。
ときに物語を引っ張り、ときには巻き込まれて、次なるステージへと観客を誘う各キャラクターたちには、ハリウッド流+日本の子ども向けアニメのハイブリッド的にぎやかさを感じる。
トータルとしては、主軸となるストーリーをぶらさず、余計な要素は極力省き、でもお遊びは忘れず、あれもこれも感も出し、多彩なキャラクターを活躍させて、怒涛の展開で突き進む巨編。
まぁ「若者向けのワクワク夏休みムービー」の域は出ていないし、奥行きとか情緒なんかこれっぽっちもないのだが、説明に追われたり迫力だけに頼っている気配もあった前作と比べ、今回は上手にまとめて、「雑然・単調」ではなく「一気呵成」のエンターテインメントとして仕上げてある。期待以上のパート2だといえるだろう。
となると、パート3にも期待したくなる。新機軸を打ち出してくるのか、それとも今回各所に隠し味として散らしてあった“時間と空間”というキーワードを伏線として生かすのか。
いずれにせよ、多彩なキャラクターを無駄にせず、各自の立ち位置や性格を展開・演出と密接に結びつけた作品にすることが課題となるだろう(正直今回は、サム/オプティマス/ザ・フォールンの三者にまつわる物語に寄りすぎていたようにも思う)。
また気持ちの良い“おなか一杯”を味わわせてもらいたいものである。
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