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2009/08/15

ライラの冒険 黄金の羅針盤

監督:クリス・ワイツ
出演:ダコタ・ブルー・リチャーズ/ニコール・キッドマン/サム・エリオット/エヴァ・グリーン/ベン・ウォーカー/ジム・カーター/トム・コートネイ/イアン・マクシェーン/クリストファー・リー/サイモン・マクバーニー/ジャック・シェパード/マグダ・ズバンスキー/デレク・ジャコビ/クレア・ヒギンズ/チャーリー・ロウ/ダニエル・クレイグ
声の出演:フレディ・ハイモア/イアン・マッケラン/クリスティン・スコット・トーマス/キャシー・ベイツ

30点満点中16点=監3/話2/出4/芸3/技4

【運命の少女、真実を映すコンパスとともに】
 われわれの世界と平行して存在する、別の世界。そこでは魂が動物の形を取り、人間に寄り添って暮らしていた。教権と呼ばれる指導者たちは、世界と世界をつなぐ“ダスト”の存在を封印、さらに子どもたちをさらって洗脳しようとする。ダストの謎を解き明かすカギ=黄金の羅針盤を手にした運命の少女ライラは、海に住むジプシャン、気球乗りのスコーズビー、鎧グマのイオレク、魔女セラフィナらと、教権に立ち向かっていくことになる。
(2007年 アメリカ/イギリス)

【描写の不足と構成の粗さが目立つ】
 ヒロイン役=ダコタ・ブルー・リチャーズの美しさが、本作の大きな魅力のひとつだろう。スチールや予告編では「華も萌え要素も足りないなぁ」と感じていたのだが、実際にライラとして動いてみると、大人びて凛とした顔のライン、そこに潜む等身大の欧州少女の健やかさ、そして声を裏っ返しての叫びが、予想以上にラブリーだ。
 主要な配役を非アメリカ系で揃えたことも効いている。堅めのイギリス英語こそが、この世界にはふさわしい。そこに混じるサム・エリオットのアメリカンな雰囲気が、なかなかのスパイス。

 またファンタジーでは、美術、CG、ガジェット、衣装などの“見た目”でどれだけ世界を作り上げられるかが、評価の分かれ目。その点で本作のデキは、マズマズといったところ。
 パラレル・ワールドの地球ということでまったくの異世界にするわけにはいかず、つまりは衝撃度としては薄いのだけれど、でもその中で、前時代SFっぽい建物、スチーム・パンク的あるいはカラクリ的な乗り物やガジェットなどを散りばめて、懸命に別世界の創出に取り組んでいる。
 多彩なロケーションと透明感のある映像の質も見事だ。

 そもそもパラレル・ワールドとか、「魂=ダイアンが動物の形で人に寄り添う。ダイアンが傷つけば人も傷つき、人が死ねばダイアンも消える」という原作のアイディアが、わかりやすく、かつ秀逸。今後の展開の多様性を予感させる。

 ただ、ストーリーというか、このシリーズの目指すところは、決してわかりやすいとはいえない
 文章でじっくり読めば、またはシリーズが完結すれば、人と人との関係、それぞれの目論見、この世界での価値観とパワー・バランスなどに対する理解もジワジワと進むのだろう。
 だが、この映画単独でお話を捉えた場合、広がりも奥行きも神秘性も不足気味。「誘拐された子どもたちの救出およびライラと羅針盤を守ること」という、本作におけるライラたちの課題と展開の大枠はスッキリしているのだけれど、ダストや世界や人物たちの行動についての「なぜ?」という部分は描写も説明もされず、「これからおいおい解き明かしていきますから」的な雰囲気も足りていない。

 少なくとも、教権、アスリエル卿、コールター夫人の三者については「何をどうしたいのか?」を、子どもにもわかるよう提示すべきだったはず。
 また、事実関係や今後の行動についてかなりセリフによる説明に頼ってしまっているし、おまけに尺が短く、展開の細かな部分で強引さと唐突さが目につく。
 致命的なのが、イオレクのシングル・ファイトもクライマックスの戦闘シーンも、あっけなく終わってしまうこと。つまり、見せ場も足りない

 結果、見た目の美しさは上々だけれど、なんとなくこの世界にもお話にもノれないままで進んでいく映画、人物や価値観には僕らの住む現実世界のメタファーが潜んでいるはずなのに読み取る気力の起きない作品となり、神秘性・キャラクター性・ワクワク度・スケール感の点で『ハリー・ポッター』シリーズや『LOTR』に及ばない仕上がりになってしまっているのだ。

 全三部作らしいので、続編と完結編を含めたトータルでの“まとまり”に期待するとしよう。

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