28週後...
監督:フアン・カルロス・フレスナディージョ
出演:ロバート・カーライル/ローズ・バーン/ジェレミー・レナー/ハロルド・ペリノー/イモージェン・プーツ/マッキントッシュ・マグルトン/イドリス・エルバ/キャサリン・マコーマック
30点満点中16点=監3/話3/出3/芸3/技4
【崩壊したイギリスで】
謎のウィルスが全土に蔓延し、人間がゾンビと化したイギリス。なんとか逃げ延びたドンだったが、その過程で妻アリスを見殺しにしてしまったことを悔いていた。事件から28週後、米軍の主導で英国再建がスタート、国外に出ていた人々が帰還を始める。そこにはスペイン旅行中だったドンの娘タミーと息子アンディの姿もあった。ふたりは生家を訪ねるため封鎖区域へと抜け出すのだが、それが思いも寄らぬ出来事を引き起こすことになる。
(2007年 イギリス/スペイン)
【気概はあるが未消化】
ジョコジョコと騒がしい音楽はちょっと安っぽいし、さすがにハリウッド大作ほどのスケール感はない。けれど「ゾンビがカメラを背負って走る」など多彩なカメラワークを駆使し、短いカットをスピーディに畳みかけて、ハラハラを誘う作り。
牧歌的な風景とグロ&スリルの対比が上々で、手間ひまをかけて、人のいない都市、復興の始まった国、燃えさかる街といった世界をきっちりと作り出している。
全体に、丁寧に撮られているという印象だ。
そこで繰り広げられるのは、いきなりの殺戮、パニック、急転、再会、哀しみ……と、意外な展開。キス、瞳の色、夫婦の愛を示す指輪といったアイテムを散らしながら「ただの恐怖映画ではない」との主張も醸し出す。
ふむ、前作にあたる『28日後...』も「恐怖映画とロードムービーのハイブリッド」という新しいゾンビ映画を目指していたけれど、今回も“既存のゾンビ映画とは違うものを”という気概を漂わせる。
が、中盤からはいつも通りの「パニック・ムービーとしてのゾンビ映画」へとシフト、意気込みは霧散してしまう。
おいおい、やりたかったのはそういうことじゃないだろう。
歴史的大惨事の陰にある、個人レベルでの苦しみ。これまでもゾンビ映画で描かれてきたそのテーマを“家庭”へと落とし込み、生き延びた者の哀しみ・苦しみ、国家システムの崩壊よりも重大な問題となりうる家庭の崩壊、たとえ崩れ去っても受け継がれる資質と希望……。そのあたりが主軸じゃなかったのか。
せっかくの前半が、乱暴で未消化な後半のために台無しだ。
同監督作の『10億分の1の男』も、やらなきゃならないことをウヤムヤにすませてしまった映画だったけれど、今回もまたそういう感じ。
まぁローズ・バーンは可愛いし、タミー役イモージェン・プーツも今後ブレイクしそうな別嬪さんだし、ユニークなストーリーと作りの確かさで最後まで観せるんだけれど、そのユニークさの中に潜む「この映画でいいたいこと、いわなければならなかったこと」を、ちょっと疎かにしてしまった感のある作品である。
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