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2009/08/18

ペネロピ

監督:マーク・パランスキー
出演:クリスティナ・リッチ/ジェームズ・マカヴォイ/キャサリン・オハラ/リチャード・E・グラント/ピーター・ディンクレイジ/サイモン・ウッズ/ロニ・アンコーナ/マイケル・フィースト/ニック・フロスト/ナイジェル・ヘイバース/レニー・ヘンリー/リチャード・リーフ/リース・ウィザースプーン

30点満点中18点=監4/話3/出4/芸4/技3

【ブタ鼻の少女は、自由を夢見る】
 魔女に呪われた名門ウィルハーン家。やがて生まれた女の子=ペネロピはブタの鼻を持っていた。屋敷に閉じ込められて暮らす彼女の呪いを解くためには「仲間に心から愛されること」が必要。母ジェシカは娘と名家の男子とのお見合いを何度も試みるが、みんなペネロピの顔を見て逃げていく。ペネロピの写真を手に入れようと画策するゴシップ誌の記者レモンは、没落名家のマックスを金で雇い、お見合いパーティーへと送り込むのだが……。
(2006年 イギリス/アメリカ)

★ややネタバレを含みます★

【好きな空気。でもちょっと残念な作り】
 監督は『ロスト・ストーリー~現代の奇妙な物語~』の中の1編「同じもの」を撮った人。あっちはかなりツマラなかったけれど、本作はまずまずの好仕上がりだ。
 抜群のスピード感と騒々しさ、味のあるナレーションで一気にストーリーへと引き込むオープニングと、可愛いタイトルが、まずは秀逸。以後はフジテレビのコメディのような、おフザケを交えての軽くてポップなノリ

 ただしカメラを大胆に動かし、人も大きく動かして、あるいはミステリアスな美術・ロケーションにもこだわって、小さい物語の割にはスケールのある絵を作り出していく。
 ペネロピとマックスの初対面の際の息を呑む緊迫感、マックスをノイズで包むことによって描写する“孤独”。空気が張り詰めて痺れるような、粋なシーンも多い

 クリスティナ・リッチはブタ鼻でも可愛いし、ジェームズ・マカヴォイはヤサぐれた役も上手に演じるし、キャサリン・オハラとリチャード・E・グラントによるママ&パパのトボケ具合もいいし、レモンのピーター・ディンクレイジのタフネス&ダンディ&捻じ曲がりっぷりもステキだ。

 残念なのは、ちょっと散文的というか、進むべき方向が曖昧になってしまったこと。
 まず自分と向き合うことから人生は始まる、という主張はわかる。「呪いを作るのは自分自身の心」というのも真理だ。セッション・シーンには「人生は演奏と同じ。自分の感性としっくりハマる楽器と出会えるか、自分の居場所を見つけられるか、運命が導いてくれる」という隠しテーマが潜んでいるのだろう。
 それらはとても素晴らしいメッセージであり、好むと好まざるとに関わらず各種の“個性”や出自を抱えて生きる人間が、他者との関わりの中で自分自身を見つめ直し、本当のスタートを切る、という物語を、上手くファンタジーに仕立て上げていると思う。

 が、たとえばペネロピとマックスの鏡越しの逢瀬は、もっと時間を費やして、何気ないけれど深い意味を持つ会話を重ねていくべきだったろう。マックスの背景も描き込み不足。ペネロピとマックスがたがいに“同じ想い”を抱いているのだと、わかりやすく示して欲しかったところだ。
 後半、外界へ飛び出してからのペネロピの様子も、やや食い足りない。バーテンダーや配達人アニーとの交流があまりにもサラリとし過ぎているし、正体がバレてからの騒動、呪いが解かれる場面、母ジェシカの複雑な想い、自立し始めたペネロピ……といったモロモロも、「ありのままの自分を好きになるペネロピ」という軸をブラさず、ベタでいいから理路整然と、印象的に、わかりやすく展開させていくべきだった。

 そうやって、生きたメッセージがよりダイレクトに届いてくるような作りに気を遣ってこそ、寓話は寓話として成立するのだと思う。
 ファンタジーにありがちな“曖昧さ”が、ちょっと惜しい1本である。

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