ぼくの大切なともだち
監督:パトリス・ルコント
出演:ダニエル・オートゥイユ/ダニー・ブーン/ジュリー・ガイエ/ジュリー・デュラン/ジャック・マトゥー/マリー・ピレ/エリザベス・ブールジーヌ/アンリ・ガルサン/ジャック・スピエセル/フィリップ・デュ・ジャネラン
30点満点中17点=監4/話3/出4/芸3/技3
【嫌われ者の親友探し】
人間に興味はなく、ひとり娘からも疎まれ、その目にあるのは“モノ”ばかりという古美術商フランソワ・コストは、誕生パーティーの席上で知人たちから「君の葬式になんか誰も参列しない」といわれる。共同経営者のカトリーヌと「今月中に親友を連れて来る」という賭けをした彼は奔走するが、自分が嫌われ者だったことを知らされるだけ。たまたま出会った人懐っこいタクシー運転手ブリュノに人付き合いの方法を教わるのだが……。
(2006年 フランス)
【本当のテーマは……】
確か「友だちは“作る”もんじゃない。“なる”もんだ」といったのは、成田美奈子作『CIPHER』に登場するハルだったか。
いつの間にか人間って、日々の暮らしに追われたり些細な事柄に悩まされたりして、社会の中で“関係”というものに疲弊し、そういう当たり前のことを忘れてしまうものである。
で、フランソワとブリュノが友だちになる過程を、あるいは誰かと誰かの間にあるのは「関係の証拠」ではなく、ただ「関係」だけなのだということを描く作品。印象としては“惜しいなぁ”だ。
冒頭、未亡人の視線で「フランソワは、いけ好かないヤツ」ということを示したり、フランソワを望遠で撮って背景(社会)から浮き上がらせたり、作りの手堅さを見せるいっぽうで、カットの切り替えしが上手くつながっていなかったりなど無頓着な部分もある。
ストーリーはかなりベタ、途中でクライマックスが読めてしまう展開。予定調和のハートウォーミング・コメディなのでそれはいいとしても、フランソワの嫌われ具合&俗物性の描写が端折られていたり、ブリュノの過去をあっさりセリフで説明したり、やや性急な感じが残る。
それでも心に染みるのは、人間関係についての真理に迫ろうとしているからだろう。
友達の間にだって秘密はある。価値観の違いもある。自分のことしか見えなくなる状況ってのもある。友だちのために流した涙で壺が一杯になるなんて、とうていあり得ないことだ。
けれど人と人との関係なんて、そんな風に脆いものだからこそ、思いやりとか行動とか「ごめん」とか「ありがとう」が必要になるのである。無理に友だちを『作る』ことはないにしても、『なる』ためには、やっぱりそれなりの決心が求められるのである。
とはいえ、そうやってジタバタしたところで、オンナの企みには敵わないわけで。ジュリー・ガイエの類稀なる美貌といい、その計算高さでフランソワを操ってしまう役柄といい、カトリーヌのまぁ怖いこと。娘のルイーズもウラでコソコソやっていたみたいだし。
結局は、何をやっても男なんか女の手のひらの上で踊っているだけ。それが本作の真のテーマであり、世の中の成り立ちなのかも知れない。
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