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2009/08/20

オール・ザ・キングスメン

監督:スティーヴン・ザイリアン
出演:ショーン・ペン/ジュード・ロウ/アンソニー・ホプキンス/ケイト・ウィンスレット/マーク・ラファロ/パトリシア・クラークソン/ジェームズ・ガンドルフィーニ/ジャッキー・アール・ヘイリー/キャシー・ベイカー/タリア・バルサム/トラヴィス・シャンパーニュ/フレデリック・フォレスト/グレン・モーシャワー/ニコル・ボベック/ルーク・モリス/キャロライン・リニー・クリストマン/ジョシュア・デイヴィス//////

30点満点中17点=監3/話3/出4/芸3/技4

【善と悪。そのふたつしか存在しない世界】
 ルイジアナ州メーソン。市の不正を糾弾して出納官の職を追われたウィリー・スタークは、有力者の後押しで知事選に立候補する。が、それは対立候補が票を割るために仕組んだ罠。事実を知ったスタークは演説で怒りをぶちまけ、さらに企業や金持ちから取った税金を貧困層のために使うことを公約として当選する。やがて彼自身の身にも弾劾の危機が迫るようになり……。ひとりの政治家の半生を、新聞記者ジャックの目を通して描く。
(2006年 ドイツ/アメリカ)

【政治というおこないの真実】
 スタークの背景や凋落の詳細=なぜの部分は、ほとんど描かれない。ただ怒り、ただ溺れていくだけである。その“描写不足”を補うのが芝居だ。
 見事なまでに演技派たちをキャスティング。ショーン・ペンをはじめ、すべての役者が、表情の微かな変化、小さな動き、クセ、たたずまい、喋りかたなどで、育ちや価値観や現在の心境を表現していく。
 全編を通して、彼らの芝居と会話で進むような映画だ。

 とはいえ、単なるお芝居映画にとどまらないよう映画的な工夫も凝らされている。時制を操り、色調をコントロールし、カメラを動かし、ときにドキュメンタリー・タッチの撮りかたも織り交ぜて。
 ことに音関係の仕事が上質。ジェームズ・ホーナーによる重厚なサウンドトラック、次のシーンの音が前のシーンから始まる作り、異なる場所での演説を切れ目なくつないだ技などが耳に残る。

 そして、セリフと展開の中に込められた、真理の数々
 波乱万丈の人生を送るスタークは「記事にしやすい」男だと称される。世に悪と私欲がはびこっていて、その凝縮として彼は存在するのだ。そしてそんな社会では、みすぼらしく、汚らしく、けれども真っ直ぐで“声の大きな者”が愚鈍な民衆を導いていくという、歴史的事実をも本作は示す。
 泥があるから、その上に緑が育つ。人間は、おむつから墓場まで悪臭を放つもの。やがて混じりあい、見分けがつかなくなる善と悪の血。わかりやすくて適確な喩えが散らされる。

 前述の通りスタークが腐っていく「なぜ」は描かれない。それどころか、いわゆる「倫理的に正しい行為」は、どこにも登場しない。
 が、しょせん、人とはそういうもの、理由もなく悪へと進むものなのだ。絶望感と諦観と、愚かさだけが物語に流れる。
 たぶん、いつの時代でも、どこの国でも、誰がどんな地位に就こうとも、同じようなことが繰り返されていくのだろう。
 僕らの国では政治(家)への不信が加速している。けれど、そもそも政治という行為そのものが不信とイコールで結ばれるものなのだ。
 だって人間そのものが泥にまみれた存在なのだから、そんな生き物を引っ張っていこうという輩なんて、泥の権化に違いない。

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