シューテム・アップ
監督:マイケル・デイヴィス
出演:クライヴ・オーウェン/ポール・ジアマッティ/モニカ・ベルッチ/スティーヴン・マクハティ/グレッグ・ブリック/ダニエル・パイロン/ラモーナ・プリングル/ジュリアン・リッチングス/シドニー・メンデ=ギブソン&ルーカス・メンデ=ギブソン&カイリン・イエロウリース
30点満点中18点=監3/話3/出4/芸4/技4
【護れ赤ん坊! 撃て、撃て、撃て!】
ミスター・スミスは、銃を持った男の一団から妊婦を助ける。彼女は出産直後に死亡、生まれたばかりの赤ん坊を抱えて逃走することになるスミス。しつこく追ってくる集団の正体は? 彼らを率いるハーツの雇い主は? 一団とは別にスミスを狙うスーツの人物の目的は? そしてスミスが抱える過去とは? 鮮やかな銃の腕を武器に、オリバーと名づけた赤ん坊、昔なじみの娼婦ドンナとともに、スミスは真相と黒幕へ迫っていく
(2007年 アメリカ)
【バカバカしくスマート】
冒頭からエンディングまで、すべてがクライマックスといえるテンションで突き進む。「銃弾2万5千発」がウリらしいけれど、その言葉にウソはないと思えるほどのドンパチだ。
似たような作品に『スズメバチ』がある。あちらも盛大なガン・アクションが主軸、有無をいわせず観客を銃撃戦の中へと放り込み、物語背景や人物などについては少しずつ解きほぐしていく、という作り。で、「潔くてスピーディーで迫力はある。でも、奥深さや広がりやヒネリは効いていない」という評価の16点だった。
本作にも同様のニオイはあるのだが、はるかに上手く仕上げられている。
ひとつは、ぶっとび具合。いやもうマンガというかゲームというかB級香港映画というか、あり得なくって奇天烈なアクションの連続。思わず笑いが漏れるほどユニークで、でも不思議と説得力があって、飽きさせない場面と展開。「狙った安っぽさ」が成功している。ニンジンで人を殺すって……。
奇天烈なだけじゃなく、たとえばスミスがトイレに逃げ込むまでの順路をちゃんとうつし、追っ手がその順路を通って来るのを同じようなアングルで再現して、追われる者と追う者の距離感・追いつかれるまでに残された時間を表現するなど、描写の妥当性もある。
巧みに整理されたストーリーも効いている。役名のある人物をギリギリまで絞り込み、黒幕ふたりの位置づけも軽いものとし、スミス、ドンナ、ハーツの描写にのみ注力、あとは“撃ち殺されるだけの雑魚”と割り切ったのがいい。奥深さや広がりはそっちのけ、ひたすら「余計なものはいらねぇ」という潔さを貫いたわけだ。
その中に潜ませる“家族”という味つけ。家族を失った者、家族にいい顔をしようとする者、家族を道具にする者、その対立が、ボンヤリとではあるが作品独自の色を作り出す。擬似家族たるスミスとドンナとオリバーに対して「生き延びるべき」という想いを観客に抱かせ、感情移入を誘う。
出演陣もいい。クライヴ・オーウェンはいつも通り得体の知れないタフガイで安定感ばっちり。ポール・ジアマッティは「こういう役もできるんだ」という驚きを与えてくれる。モニカ・ベルッチって、こんなに可愛い眼をしてたんだなぁ。
そして何より、バックパック・オリバーの愛らしいこと。
いや、ほんとバカバカしい映画ではあるんだけれど、実にスピード豊か、楽しくスマートにまとめられていて、最後まで一気に見せ切るアクション・エンターテインメントの快作&小品である。
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