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2009/11/30

うた魂♪

監督:田中誠
出演:夏帆/ゴリ/石黒英雄/徳永えり/亜希子/岩田さゆり/ともさかりえ/田中要次/森下能幸/山中崇/加勢大周/ゴスペラーズ/間寛平/薬師丸ひろ子

30点満点中15点=監2/話2/出4/芸5/技2

【合唱ナメてんじゃねえぞ!】
 北海道の港町、七浜高校に通う荻野かすみは合唱部のエースで、少しばかり自意識過剰な女のコ。歌は絶好調、思いを寄せる牧村純一との距離も縮まりそうになるが、歌っているときの顔を牧村が笑っていることを知り激しく落ち込む。以前のようにノビノビと歌えなくなり、ライバル校(?)である湯の川学院の権藤にまで「合唱ナメてんじゃねえぞ!」と一喝される始末。コンクールの地区予選まで、あとわずか。かすみは立ち直れるのか?
(2008年 日本)

【ショボさの中に潜んだ輝き】
 カット数の少なさ、画角バリエーションの乏しさ、ベタっとした質感の絵柄などショボショボ映画特有の要素に満ちていて、健やかなテーマを扱っているのに華やかさが足りない。テレビサイズ、それも地方局か深夜枠級の仕上がりだ。

 とりわけ悲惨なのが、シナリオ。どうしてこうも喋りすぎたり説明しすぎたりするのだろう。
 せっかくパフォーマーたちが極上の歌を披露してくれているのに、それをなぜわざわざ「スゴイ」とか「びしびしハートに伝わってくる」だとか登場人物のセリフで解説してしまうのか。はっきりとクドイ。『フラガール』の感想でも述べたが、スゴイことを表現したいなら、観客に「スゴイ」とわからせるように描写すれば、それでいいのだ。
 ほかにも、冒頭部、夢心地で歌うかすみを見て釣り人がこぼす言葉も「あの子、大丈夫かね?」じゃなく、単に「……今年は暑いからな」だけのほうがよっぽど笑えたはず。「全国大会の地区予選」も「地区予選」だけで十分だろう。

 全体として、映画を映画たらしめるために何が必要で何が不要かということについて考えのない、「ここが最近ハヤっているというカフェか」みたいな独白で始まる頭の悪いコントのよう。シナリオコンクールの大賞受賞作らしく、まぁ素人の作品だということで納得するとしようか。

 と、突き落としておいて、じゃあ観なくていいかと訊かれれば「でも、いい映画」といえる。正確には「いい部分も詰まっている」作品。

 第一にキャスト。
 己に酔い、浮かれ、ずっぽりと落ち込み、乙女にあるまじき言葉を堂々と叫んで立ち直る荻野かすみ=夏帆が、実に瑞々しい。表情の作りといい、セリフ表現といい、まるで少女漫画から飛び出してきたようなプロポーションといい、これほどまで見事に「青春ファンタジーのヒロイン」を等身大で演じられるタレント(才能)は稀有だろう。オレにくれ。
 無理めに思えるゴリも、いつものコント芝居より控えめな演技で権藤という美味しいキャラクターをまっとうして上々。みずき役・徳永えり、かえで役・亜希子のオトコマエっぷりも清々しい。薬師丸ひろ子の歌声と母性(というか姉貴性)もいい。

 けちょんけちょんにいったシナリオにも、輝きが潜んでいる。
 たとえば「ずっとモテてきたけれど、本命から告白されるのは初めて」って、かすみがどんな人間であるかを示す、いいセリフじゃないか。「必死になってる顔に疑問を持つようなヤツは、一生ダサイままだ」って、泣かせる言葉じゃないか。かすみが落ち込む理由も知らず「大きく口を開けて歌ったり笑ったりするかすみが好きだ」といってくれるお爺ちゃんって、素晴らしい癒しじゃないか。
 ほかでは“FULL TEEN”のTシャツとか、やっぱり遅刻してくるバス運転手・溝口が笑いのツボだ。

 なにより拍手を送りたいのは、歌そのものや歌うという行為に対するリスペクトを感じられる点だ。
 歌うことで、自分がどう変わるのか。歌うことで、周りにどんな影響を与えられるのか。そもそも歌って、なんなのか。そうした問いかけを、しっかりと放っている。
 ノーランズの「ダンシング・シスター」が可愛くって楽しい。エノケンの「私の青空」に笑みがこぼれる。モンパチの「あなたに」に泣ける。あまり好きではない「15の夜」も、ここまでスピリチュアル&ソウルフルにやられると圧巻だ。各曲の合唱アレンジも絶妙で、ああ大声で歌いたいと思わせてくれる。
 まさに歌が「びしびしハートに伝わってくる」ことの連続で、そうした点で『スウィングガールズ』の上を行く音楽映画ではないだろうか。

 かように、いい部分もいろいろと詰まっている。もうちょっとしっかり、映画として仕上げられていれば、かなりの感動作になったはずである。

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